抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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JIS SUS630(17-4PH)は,マルチンサイト系析出硬化型ステンレス鋼であり,良好な耐食性と高強度を兼ね備えていることから,軽水炉においても高強度が求められる弁棒等に用いられている。しかしながら,中間温度域(300~450°C)での長期間の使用により,靱性やシャルピー衝撃値の低下などの熱時効脆化が起こることが知られている。また,軽水炉での損傷事例では,析出硬化熱処理条件や熱時効脆化が,この鋼種のSCC挙動に影響すると指摘されているが,その詳細については不明である。そこで,種々のSUS630のPWR1次冷却材模擬水(500ppmB+2ppmLi+30cc/kg・DH)中のSCC進展速度を290°Cと320°Cで調べた。SCC進展速度は,1/2TCT試験片を用いて,応力拡大係数K=30MPa√mで実施した。SCC挙動に及ぼす析出硬化熱処理の影響を調べるため,硬さや靱性の異なる4種類のSUS630,即ちH900,H1025,H1100,H1150を用意した。これらの材料に,320°C~400°Cで最長3,000時間の熱時効を施し,SCC挙動に及ぼす熱時効の影響を評価した。その結果,比較的高靱性で低硬度のH1100とH1150の未時効材の高温水中SCC進展速度は,極めて遅かった。一方で,より高硬度のH900とH1025の未時効材,および400°Cで3,000時間熱時効したH1100とH1150のSUS630は,有意なSCC進展を示した。SUS630は析出硬化熱処理条件およびその後の熱時効により硬化した。硬さとSCC進展速度の関係から,SUS630はビッカース硬さで380を超えた時にSCC進展速度が増加することが分かった。(著者抄録)