抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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西グリーンランド・イスア表成岩帯(約38億年前)では生物由来グラファイトが発見されている。しかしながら,グラファイトの前駆物質である微生物の棲息環境や微生物種について詳細は明らかになっていない。本研究では生物由来グラファイトの報告があったイスア表成岩帯の西部において,黒色片岩及び縞状鉄鉱層(Banded iron formation:BIF)の地質学的・地球化学的特徴及び希土類元素含有鉱物の産状とChemical Th-U-total Pb Isochron Method(CHIME)年代測定から堆積環境を復元することにより,当時の微生物の棲息環境に制約を与えることを目的とした。イスア表成岩帯西部ではBIFの層が複数南北に渡り分布しており,黒色片岩層は西部北端に位置するBIFの層間に分布している。露頭では黒色片岩及びその周辺のBIFはシリケイトに富むのに対して,南側のBIFはマグネタイトに富む様子が観察された。誘導結合プラズマ質量分析計による全岩化学組成分析結果では,黒色片岩及びその周辺のBIFのFe
2O
3/MgO比は低くMgに富む傾向を示すのに対して,南側のBIFはFe
2O
3/MgO比が高くFeに富むことがわかった。緑泥石及び角閃石の化学組成においても同様に,北側はMgに富み,南側はFeに富む傾向がみられた。黒色片岩及びBIF試料中のAl
2O
3及びTiO
2量(wt%)は正相関を示しており,黒色片岩及びその周辺のBIFがAl,Tiに富むのに対して,南側のBIFはAl,Tiに乏しい傾向が見られた。また,グラファイトに富む黒色片岩試料中の希土類鉱物を走査型電子顕微鏡で観察したところ,モナザイトがグラファイトに富む層のみに葉理に調和的な産状で卓越していることがわかった。モナザイトのCHIME年代測定結果は3630±91Maであり,過去の研究で報告された砕屑性ジルコンの年代とプログレード変成作用の年代を範囲に含むことがわかった。モナザイトの産状から考えると,モナザイトはもともと砕屑物として混入した後,変成中に年代のリセットを受けた可能性,初期続成作用から変成作用の間に岩石中で結晶化した可能性の両方が考えられる。以上の結果は,黒色片岩及びその周辺のBIFがMg,Al,Ti,希土類元素を含む地殻砕屑物が多く混入するような浅海域で堆積したことを示しており,当時繁茂していた微生物は浅海で繁茂していた光合成細菌であった可能性を示唆するものと考えられる。(著者抄録)