抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
世界有数の畜産品輸出国であるデンマークでは,大量排出される家畜排せつ物の有効利用を目的に1970年代からバイオガス利用の技術開発が進められ,畜産農家を中心にバイオガスプラントが広く普及してきた。しかし,2007年の経済危機以降,畜産農家の投資能力が低下し,バイオガス生産を巡る状況に大きな変化が生じている。そこで本研究では,新たなモデルとなる「エネルギー会社参入型」のホルステル・バイオガスプラントおよび「自治体主導型」のソルロー・バイオガスプラントという2つのバイオガスプラントを事例とし,バイオガス増産政策下における,持続可能なバイオガス生産システムの構築に向けた「農家」,「自治体」,「エネルギー会社」という3主体の役割や連携を明らかにすることを目的とした。具体的には,まず現地聞き取り調査を行い,得られた情報をInstitutions of Sustainability(IoS)枠組を用いて整理し,取引コスト節約戦略という観点から主体の関係性や調整について分析した。プラント設立には環境影響評価の実施や周辺住民との協議等が必要であり,稼働前の探索コストや交渉コストは高くなる。しかし,これらは長期稼働には不可欠であり,結果的にモニタリングコストの削減に貢献する。またプロジェクト実施には,公害や気候変動緩和といった地域全体の問題意識の共有や利害関係者を調整する人材確保の重要性も示された。他方,長期契約や排せつ物管理へのボーナス支払い等の畜産農家への経済的インセンティブといった工夫も見られた。先進事例を扱った本研究によって持続可能なバイオガス生産システムの構築へ向けた成功因子が示唆された。(著者抄録)