抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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酸化水銀(Hg(II))は,元素水銀の酸化により大気中で化学的に生成し,ヒトの活動で直接排出される。著者等は,様々な大気高度でのHg(II)生成により,Hg(II)の地表沈降が如何に影響されるかを定量化するため,Br元素により促進されるガス酸化を含むGEOS-Chem全球化学輸送モデルを用いた。著者等は,下部(地表~750hPa),中部(750~400hPa)上部(400hPa~圏界面)の対流圏で化学的に生成するHg(II),そして,直接排出されるHg(II)にタグ付けした。著者等は,著者等の2年間のシミュレーション結果(2013~2014年)を,Hg(II)湿性沈降観測と地表と自由対流圏におけるHg(II)観測の結果に対し評価し,ほぼ一致することを見出した。著者等は,上部と中部の対流圏で生成したHg(II)が,対流圏Hg(II)質量の91%,年間Hg(II)湿性沈降フラックスの91%を構成することを見出した。上部と中部の対流圏からのこの大きな全球影響は,これらの領域でのHg(II)の長寿命と関連した強い化学的生成の結果であった。年間で,米国西部,南米,南アフリカ,オーストラリアの地表レベルHg(II)の77~84%は,上部と中部の対流圏で生成し,米国東部,ヨーロッパ,東アジア,南アジアの地表レベルHg(II)の26~66%は,直接排出であった。排出源近くでの直接排出されたHg(II)の影響は大きいが,著者等の粗い分解能(緯度2°x経度2.5°)の全球モデルでは定量化できなかった。海洋で,地表Hg(II)の72%が,海洋境界層での高いBr濃度により,下部対流圏で生成した。Hg(II)乾性沈降フラックスへの上部と中部の対流圏の全球寄与は52%であった。高所で生成したHg(II)の乾性沈降は境界層にエントレインメントされる必要があるものの,降雨はより容易に高高度でHg(II)を捕捉できるため,乾性沈降は,湿性沈降の寄与と比べ小さかった。著者等は,Mercury Deposition Networkサイトで観測されたHg湿性沈降フラックスの空間変動の55%が,降水量と上部と中部の対流圏で生成したHg(II)を合わせた変動により説明できることを見出した。著者等のシミュレーションは,乾燥した亜熱帯の下降域の大きな役割を示した。これら領域の存在するHg(II)は,アメリカ大陸の500hPaでのHg(II)の74%,米国西部の高高度での地表Hg(II)の60%以上を占めた。全球では,それは,対流圏Hg(II)質量の78%と総Hg(II)沈降の61%を占めた。Nitrogen, Oxidants, Mercury, and Aerosol Distributions, Sources, and Sinks(NOMADSS)航空機キャンペーンで,乾燥した亜熱帯からのHg(II)の寄与が,Hg(II)測定値が250pg m
-3を超えた時,75%であることが分った。上部と中部の対流圏で生成したHg(II)は,乾燥状態がHg(II)損失を抑制する高気圧で,降下した。著者等の結果は,全球大気へのHg(II)の生成と移出の主要な経路としての亜熱帯高気圧の重要性を明らかにした。(翻訳著者抄録)
