抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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前回,バラスト水処理装置のレトロフィット費用は15年以上の中古船にとって負担が重く,15年以上の中古船の新造船価やチャーターレートに対する相対的な市場価値は今後低下していくと述べた。ただし,その水準は金融経済の動向を含めた外部環境次第であり,影響を与える要因が複雑なため現時点で正解を導き出すのは困難であろう。今回はその目安となる水準を試算するとともに,他の環境規制が海運市場に与えている影響と,そういった前提の下,不透明な状況が想定される将来の影響についてリスク管理の観点からどのような対応が現時点で望まれるのか検討した。レトロフィット費用を5年間で吸収するにはチャーターレートは4-6%の上昇が必要となる。バルカーのチャーターレートの年間の変動率は通常はドル円レートで13-15%程度であり,それらと比べるとバルチック海運指数(BDI)の現状の変動率は高く,特にケープサイズは群を抜いて高い。これらの変動率の高さから考えればレトロフィットによる4-6%程度のコストアップ要因は船型によっては問題視されない可能性もあろう。バラスト水管理規制の発効を受けた船腹需給の引き締まりが徐々に顕在化していくことで,結果,今後の新造船の収益性は高まっていくものと考えられる。バルカー市場は船腹需給が想定以上に引き締まり,市況は好況期を迎える可能性があろう。
