抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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背景:動物は多くの種で,行動に個性がある。行動症候群での行動特性(性格特性)は異なる行動間の相関で特徴付けられるが,この相関を維持するメカニズムは,認知特性との関連にあると考えることができる。動物の個性と一般的認知能力の間には関係があるとする証拠が多くあるが,これまでのところ研究は相反する研究結果が示されている。一方,個体はコンシステントな学習と意思決定スタイルを示すと考えられる。素早い行動タイプ(大胆でより活動的な個体)は素早く学習すると期待されている。これに対して,ゆっくりした行動スタイルはゆっくりだがより正確な学習を行うと考えられている。これは,個体が意思決定時に直面するスピード-精度トレードオフによって生じる。著者らはユーラシアカヤネズミ(Micromys minutus)を使って,3種の個性と4種の空間認知特性の繰り返し性を測定し,性格特性(行動症候群)間の相関を解析した。さらに個性と認知間の関係を探索する最初のステップとして,個性と空間認知特性の関係も調べた。結果:成体では,探索,活動性,大胆さは繰り返し性があることが示された。Y字迷路で測定された空間認知は,空間学習パフォーマンスや意思決定スピード同様に繰り返し性があった。しかし意思決定の正確さには繰り返し性が無かった。カヤネズミでは,性格特性間と行動症候群との間に強い正の相関があった。スピード-精度トレードオフは個体間でも個体内でも明確ではなかった。それにも拘わらず,素早い行動タイプは素早く空間タスクの学習を行うこと,およびシャイなカヤネズミは大胆なネズミより素早い意思決定を行うことが観察され,弱いながらも個性と空間認知特性間に相関がある証拠を見出した。結論:以上より,カヤネズミの個性と空間認知特性の間の関係について示唆を得た。この報告が本分野の研究を刺激することを期待する。(翻訳著者抄録)