抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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最近「越境大気汚染」という用語が,日本のマスメディアを賑わすようになった。他国で排出された汚染物質が,国境を越えて輸送されることで発現する大気汚染を言う。2001年1月には,国連環境計画UNEPの傘下に,東アジア酸性雨モニタリングネットワークEANETが本格的な稼働を開始した。本稿では東アジアの降水組成の地理分布を俯瞰し,原因物質の排出量の変化が,この地域の大気や降水の「質」にどう関与してきたかを考察した。中国におけるNOx排出量が頭打ちあるいは減少に転じたのが事実なら,日本列島の降水のNO
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42-濃度比は,今後どのような変化をたどるのだろうか。現在のところ明確な結論を得るには至っていない。NOx排出量が頭打ちになった原因として,経済成長の鈍化,火力発電電力量の低下,脱硝装置の普及,燃焼技術の改善などの可能性をあげている。観測データの解析をふまえて,統計的に有意な濃度比の経年変化を導くためには,数年程度のデータの蓄積では不十分である。経年変化の実証は,トップダウン方式とボトムアップ方式との整合の確認をへて,はじめて成就される問題である。長期にわたる地道な降水のモニタリングが,越境大気汚染を監視していくうえで重要なゆえんである。