抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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寒冷地における融雪剤散布によるコンクリート内鉄筋の腐食劣化は,インフラの長期的な維持管理において深刻な問題となる。本研究では,鉄筋コンクリートの腐食モニタリング手法の開発と,構造体全体の腐食モニタリングシステムの構築を目標とし,その手段としての(i)コンクリート内部環境モニタリング(ii)コンクリート埋設マルチ電極モニタリング(iii)レジストメトリーの不均一腐食評価対応について研究をおこなった。コンクリート内部環境モニタリングでは,セメントブロック試験隊内の空洞にO
2センサー,CO
2センサー,温度・湿度センサー,腐食量測定レジストメトリー用の鉄箔試料を配置し,空洞を密閉した状態でこれらのパラメータの経時変化を測定した。空洞をセメントで密閉後,密閉用モルタルから放出された水蒸気により空洞内の相対湿度が96%程度まで上昇した。厚さ10μmの鉄箔上には腐食加速用に微量のNaCl粉末を散布してあり,密閉後塩が吸湿して直ちに腐食を開始し,約200ksで断線に至った。温度保証型DCレジストメトリー計測よる測定精度は20nm程度であった。また鉄の腐食に伴い酸素濃度は16.5%から徐々に低下し14.5%以下となった。CO
2はモルタルによる吸収により2,000ppmから1,000ppm程度まで減少した。コンクリート埋設マルチ電極モニタリングでは,セメントブロック内に8本の鉄細線を等間隔で埋め込み,このうちの2本の電極間インピーダンススペクトルを,セメントブロックの1面より水を徐々に吸収させながら計測した。1kHzにおけるインピーダンスから計算した電気抵抗と電気容量の経時変化より,水の進入に伴いセメント内部の電導度が深さ方向に順次増加してゆく様子,ならびに水の到達により鉄試料表面に電気二重層が形成される様子が把握できた。また水の進入前に水蒸気の浸透により電導度がわずかに増加する様子が把握できた。電気抵抗と鉄線間距離の間の直線関係よりセメント抵抗の抵抗を算出し,その値は水の浸透量に依存することが示された。レジストメトリーの不均一腐食評価対応では,従来平均的な腐食損失しか評価できなかったレジストメトリー法に対し,多数の補助電極を配置することで不均一腐食の状態を把握するための手法を考案した。部分的に切込みを入れたCu箔試料の近傍に16個の補助電極を配置し,KClを含んだ寒天に暴露して腐食試験を行った。Cu箔試料に印可した交流電圧強度の分布を補助電極で検出したところ,切込み位置は検出できたがその感度は十分ではなく,より結合容量の大きな試料/電極系を考案する必要があることが明らかとなった。(著者抄録)