抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
フィリピンの世界クラスのFar Southeast(FSE)斑岩系は,FSE Cu-Au斑岩鉱床,Lepanto Cu-Au高度硫化鉱床,Victoria-Teresa Au-Ag中程度硫化岩脈を含み,閃緑岩組成の迸入コンプレックスを中心にして分布する。Lepanto鉱床とFSE鉱床は成因関係があり,両者ともステージ1初期の変質作用(深部ではFSEのカリ質,浅部ではLepantoの進行した粘土質-珪質変質作用,共に~1.4Ma)を特徴とし,その後ステージ2のフィリック変質作用(~1.3Ma)が続いた;FSE斑岩及びLepanto浅熱水性鉱床内の主要な鉱石の形成はステージ2の間に起きた。本稿では,Lepantoからの硫酸塩及び硫化物鉱物の化学組成とS同位体組成を明らかにした。分析した鉱物は,ステージ1の明礬石(12~28‰),明礬石-燐酸塩-硫酸塩(APS)鉱物(14~21‰),黄鉄鉱(-4~2‰),ステージ2の硫化物(主として硫砒銅鉱-ルソン銅鉱と少しの黄銅鉱,-10~-1‰),ステージ2後期の硫酸塩(重晶石と硬石膏,21~27‰)である。弱変質した鉱化時迸入岩体の全岩S同位体組成は2.0‰である。標高650m以上のLepanto被覆岩のステージ1の石英-明礬石-黄鉄鉱は,海水準付近で過塩性溶液がカリ質変質作用(黒雲母)をもたらしたのと同時期に,マグマ性蒸気の酸性凝縮物から形成された。ステージ1の明礬石-黄鉄鉱のS同位体組成は,斑岩鉱床に直接凝縮した蒸気の温度として約300~400°Cを記録している;この蒸気は酸性凝縮物として<250°Cまで冷却し,基盤岩頂部の不整合を切るLepanto断層に沿ってNW方向に流れた。FSEを覆う高度に粘土質の被覆岩の基部のステージ1の明礬石は,Sr・Ba・Caを有するAPS鉱物の核を有する;後方散乱電子画像とイオンマイクロプローブデータによれば,これらのAPS鉱物は試料内及び試料間で高度の化学的及びS同位体的不均質性が認められた。これらの細かい縞状を成すステージ1の明礬石とAPS鉱物中のS同位体値の変動幅(16‰に渡る)は,黄鉄鉱(6‰に渡る)と同じく主として温度変化によるもので,またおそらくは酸化還元条件の変化(平均2:1 H<sub>2</sub>S:SO<sub>4</sub>)にもよるのであろう。早期迸入の閃緑岩中に包有された苦鉄質捕獲岩から示唆されるように,そのような変動は,閃緑岩マグマ溜り中への苦鉄質メルトの注入によって引き起こされた流体パルスに関係しているであろう。ステージ2鉱物のS同位体値は,斑岩鉱床の海水準標高近傍で温度が400°Cであることを示し,黄銅鉱の析出をもたらす比較的還元性の流体(10:1 H<sub>2</sub>S:SO<sub>4</sub>)を伴った。ステージ2流体はLepanto被覆岩中で比較的酸化されており,H<sub>2</sub>S:SO<sub>4</sub>比は約4である。冷却による酸化作用,これは上昇時の沸騰とその後の被覆岩中での蒸気で加熱された天水による希釈によって引き起こされた。この冷却作用はまた,鉱物の硫化状態を斑岩鉱床中での黄銅鉱の安定度から,被覆岩をホストとする高硫化性鉱床中の硫砒銅鉱の安定度へと増加させる。ステージ2における被覆岩基部の温度は≧300°C,被覆岩主部内では<250°Cまで冷却し,斑岩鉱床の約2km北西のLepanto鉱体端部に向かって約200°Cまで下がる。S同位体と流体包有物温度から推定したステージ1時とステージ2時における約300°Cと200°Cの等温線は時間とともにFSE斑岩鉱床の核部に向かって移動している。マグマ-熱水系はマグマ中心を越えて発達し崩壊に至るので,この等温線の後退はLepanto内では側方方向に500m以上で,FSE内では垂直方向に500mである。この発展過程の間に斑岩鉱床への高温の鋭いパルスと比較的還元的な流体の注入があったことの証拠が,個々の結晶中のS同位体の大きな変化として記録されている。Copyright 2017 Wiley Publishing Japan K.K. All Rights reserved. Translated from English into Japanese by JST.