抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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大隅諸島は南西諸島北部に位置する島嶼群である。大隅諸島の軟体動物相について,陸産貝類に関する研究は比較的多く行われているが,汽水及び淡水産貝類の研究に関してはほとんどなく,基本的な貝類相についての分析は少ない状況である。そこで,本研究では大隅諸島及び口之島,大隅半島南部,薩摩半島南部,与論島における汽水及び淡水産貝類の詳細な分布調査を行い,貝類相について数量的解析を行い,調査地間の貝類相の関係を明らかにした。汽水及び淡水産貝類は,2007年から2008年にかけて,各調査地にある河川(主に汽水域を含む下流域や周辺干潟と純淡水域)とその周辺の水路,水田,湧水地において,簡易ドレッジ及び目視で確認できるものを採集した。汽水及び淡水産貝類は,全調査地で12科22種確認した。河口周辺に生息していた海産貝類を含めると,全調査地で21科54種確認した。各調査地間におけるファウナの類似性において,野村-シンプソン指数に基づきクラスター分析を行ったところ,種子島,黒島,大隅半島南部,口之島で1つの集団を形成し,屋久島,口永良部島,薩摩半島南部で1つの集団を形成した。大隅諸島の汽水及び淡水産貝類は,鹿児島県内に広く分布している種が多く出現種数自体も少ないため,このような地理的距離や地史と関連性がみられない結果となった可能性が考えられる。島の面積と種数の関係においてz値を求めたところ,海産貝類を含む汽水及び淡水産貝類では,0.2847の値をとり,汽水及び淡水産貝類では,0.3195の値をとった。海産貝類を含む場合よりも含まない場合にzの値が高くなるのは,海産貝類は海流分散を行うが,汽水及び淡水産貝類は水系分散をおもな分散様式とし,海産貝類に比べて移入率が低いためであると考えられ,本調査地の汽水及び淡水産貝類は,海産貝類を含む場合よりも,海洋島的性質をもつと考えられる。(著者抄録)