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J-GLOBAL ID:201702274406709585   整理番号:17A1416464

鎖状系のエネルギー分配と遅い緩和:Boltzmann-Jeans則

Partition of Energy in Chain-Type Systems and Slow Relaxation to Equilibrium: Boltzmann-Jeans Law
著者 (2件):
資料名:
巻: 72  号: 10  ページ: 728-733  発行年: 2017年10月05日 
JST資料番号: F0221A  ISSN: 0029-0181  CODEN: NBGSA  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 解説  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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自然界に存在する多体系には固体や液体,気体など様々なものがある。そのなかで,高分子やタンパク質,DNAのような,要素が鎖状に繋がった系を「鎖状系」と呼ぶ。メガフロートや宇宙ステーションの操作アームのような,剛性の高い部品が接続された人工構造物も,広い意味で鎖状系といえる。このように,多くの系が鎖状系とみなせ,これらの運動の理論的解明と機能の理解は応用上も重要である。本稿では,これら鎖状系をハミルトン力学系で記述し,その運動様式,特にエネルギー分配を考える。鎖状系の最も単純なモデルとして,質量の等しい質点が一列につながった系を考える。要素間の相互作用ポテンシャルが急峻であると考え,生物物理や化学物理の分野でよく行われるように,質点間の結合を軽い剛体棒で置き換える。この系はfreely jointed chainと呼ばれ,隣合う質点間の距離が一定という拘束がある。はじめに,鎖状系の熱平衡状態を考える。Freely jointed chainは,熱平衡状態において,各質点の平均運動エネルギーは等しくないこと,特に,末端部でそれは過剰になることを,数値計算および解析計算により示した。末端部が大きく動くことは直感的に明らかに思えるが,運動エネルギーの意味でも末端部で激しい運動が起きているのである。拘束がある系は,よく知られた形式のエネルギー等分配則ではなく,一般化された等分配則に従う。逆に言えば,熱平衡状態では一般化された等分配則の帰結として平均運動エネルギーが末端部で過剰になるという系統的な不均一性が生じる。次に,質点が剛体ではなくバネでつながった鎖状系bead-spring modelを考える。この系では熱平衡状態において通常のエネルギー等分配則が成立する。我々は数値計算により(i)末端部の運動エネルギーが過剰となる状態が過渡的に発生すること,(ii)過渡状態から等分配状態への緩和時間τが,バネ定数τが大きい時τ∝exp(c√k)(c>0は定数)でよく表され非常に長くなることを示した。バネが固い時に緩和が遅いということは,速い運動をする自由度,つまり高振動数の自由度(この場合はバネの振動)にエネルギーが行き渡るのに時間がかかることを意味している。これは,量子力学の発見以前に,BaltzmannとJeansが古典力学の範囲内で考察したことである。もちろん,この高振動数自由度の凍結という問題は量子力学の発見によって決着が付けられたが,それとは独立に,Benettinらはこのアイディアを精密化し,この凍結問題を古典力学の範囲内で解決した。これを鎖状系に適用したのがτ∝exp(c√k)なる表式である。この意味で,この遅い緩和過程を“Boltzmann-Jeans的緩和”と呼び,この指数関数型の表式を“Boltzmann-Jeans則”と呼ぶ。バネ定数kが大きなときにBoltzmann-Jeans則により緩和時間が非常に長くなることで,運動エネルギーの不均一性を実際に観測できる可能性がある。ここで示された鎖状系のエネルギー分配の不均一性と遅い緩和は,局所温度の概念や天然変性蛋白質の運動形態とも関連し,自然界および人工物における鎖状系および拘束がある系の運動形態について新たな見方をもたらすことを期待したい。(著者抄録)
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分類 (2件):
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振動論  ,  高分子固体の力学的性質 
引用文献 (36件):
  • 1) T. Konishi and T. Yanagita, J. Stat. Mech. L09001 (2009).
  • 2) T. Konishi and T. Yanagita, J. Stat. Mech. P09001 (2010).
  • 3) T. Konishi and T. Yanagita, J. Stat. Mech. 033201 (2016).
  • 4) W. Kuhn, Kolloid-Zeitschrift 68, 2 (1934).
  • 5) W. Kuhn and H. Kuhn, Helvetica Chimica Acta 26, 1394 (1943).
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