抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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研究事例に乏しい沖縄島の臨海沖積低地の形成史や沿岸災害履歴を解明するため,人為的影響の少ない小河川河口域の地形発達過程を調査した。その結果,対象地域は,かつてはエスチュアリー(三角江)で,18世紀(あるいは16世紀)後半以降になって三角州として発達し始めた,きわめて新しい低地であることが明らかになった。三角州は,現在よりやや内陸側から形成されていき,その途上で後背湿地が現在より海側へ張り出した後,一旦縮小し,20世紀後半以降になって再び拡大に転じている。この間,海面はわずかずつ上昇を続けており,三角州の縮小とは調和的であるが,形成・拡大する傾向とはやや矛盾する。一方,三角州の基底および現地表面付近には,津波またはそれに準じるプロセスで生じた異常堆積物が分布する。この異常堆積物は,三角州が形成され始めたAD1770~1830の直前,および再拡大直前のAD1960にもたらされていることから,海面が上昇する環境下で三角州が形成・拡大するための初期条件を提供している可能性がある。このように沖縄島北部における臨海沖積低地の発達には,津波などのイベントと密接に関連しているものがある。しかし,大浦川三角州においては,地形発達史がきわめて短いため,沖縄近海を震源とする巨大地震に伴う津波の再来間隔などを議論することはできなかった。本研究の結果が,大浦川固有のものなのか,沖縄島北部に共通するものなのかを明らかにするため,他地域の調査事例を積み重ねていくことが今後の課題である。(著者抄録)