抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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原子や分子の運動を記述するミクロな世界の時間発展法則と,流体や気体,熱などの拡散や輸送といったマクロな世界の時間発展を記述する偏微分方程式の間にはどのようなつながりがあるのでしょうか?この関係を,確率論の手法を用いて厳密に明らかにするのが,流体力学極限と呼ばれる時空間変数に対するスケール極限の手法です。流体力学極限は,ミクロな系を与えるランダムな大規模相互作用粒子系から,決定論的な発展方程式を導出する,大数の法則の一種です。これに付随する中心極限定理や大偏差原理も自然に考察することができ,これらは統計物理における散逸揺動定理や大偏差関数の厳密な基礎付けを与えます。流体力学極限の理論は,20年ほど前に,系のエントロピーの時間発展を調べるという普遍的な手法が生み出されたことで大きく発展してきました。その後,これまで多くの興味深いモデルに関して「ミクロな系の相互作用が,マクロな系の時間発展をどのように規定するのか」という非常に基本的な問いに,答え続けています。本講演では,流体力学極限の基本的な考え方や,重要なモデルに対する結果を紹介します。また,最近の話題として,古典力学系への流体力学極限の応用や,異常拡散のミクロな相互作用粒子系からの導出などについても述べる予定です。これらのテーマは,今後大きな発展が期待されますので,学生の皆さんにぜひ興味を持って取り組んでもらいたいと思います。(著者抄録)