抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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近年急速に分布域を拡大しているニホンジカ(シカ)が森林の植生や生態系に与える影響を予測するためには,シカの植物種に対する嗜好性を把握することが重要であるが,シカの侵入初期の低密度時における食性に関する知見はほとんどない。本研究では,シカの侵入初期の地域の一つである白神山地周辺のシカの食性を記録することを目的とした。白神山地周辺でロードキルおよび捕獲されたシカ2個体の胃内容物を顕微鏡分析とDNAバーコーディングの二つの異なる手法を用いて,複合的にシカの胃内容物を明らかにした。顕微鏡分析の試料中の内容物は,2個体ともに双子葉の葉がそれぞれ31.4%と30.5%,種子や果実が30.2%と24.0%と最も多くを占めていた一方で,ササなどのグラミノイドは少なかった。DNAバーコーディングにおいて,28科50種の多様な植物分類群が検出された。以上により,侵入初期の植生が豊富な場所においては,シカは幅広い植物分類群を採食しており,その中でも特に多く採食している分類群があることが明らかになった。今後,糞などを用いることでサンプル数を増やし,植生調査と合わせて,シカの食害に対する植物各種の脆弱性を明らかにしていく必要がある。(著者抄録)