抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
本提案書は,日本における再エネ調達について状況の整理を行い,より国際基準に照らし合わせて透明性があり,魅力的な事業操業環境にするための提案を行うものである。再エネを企業が利用したいというニーズが高まっている。これは,投資家要請によって企業に環境に関する質問書を送付し,回答を評価している国際NGOであるCDP(シー・ディー・ピー,旧カーボンディスクロージャープロジェクト)の影響,加えてCDP評価や投資家から「パリ協定を守る世界において生き残る企業か」という判断基準となっている企業版2°C目標(SBT, ScienceBased Targets)を設定した場合,電力を再エネ化することが必須となってくること,そして再エネ100%調達を宣言するRE100に参加する企業が増えていることなどもその要因となっている。これらSBTやRE100などの2°C目標達成のための企業の行動リストは,国連気候変動枠組み条約によるNAZCA(Non-State Actor Zone for Climate Action,非国家主体による気候のための行動)プラットフォームに統合されて,その進展をトラッキング(追跡)している。再エネを利用し,それがCDPやSBT,RE100にて評価可能となるためには,世界資源研究所(WRI)が中心に整備しているGHGプロトコルスコープ2ガイダンスに沿っていることが必要となる。GHGプロトコルはGHG排出量算定基準であり,スコープ2は企業が他社から購入した電力・熱・蒸気・冷熱といった二次エネルギーの生産に関わる間接排出,スコープ2ガイダンスはその企業基準(CorporateStandard)を改訂している位置づけである(本文の表4 参照)。GHGプロトコルスコープ2ガイダンスは,2015年に企業の算定報告基準の追加的ガイダンスとして発行され,系統に入ったら混じってしまう電力について,再エネを契約に基づいて利用する場合の計上方法を示している。スコープ2ガイダンスが重視しているのは,同じ再エネ発電がダブルカウントされないことであり,その効果的な手法として,トラッキングシステムを想定している。トラッキングシステムとは,再エネが1MWh発電されるたびに,電力は系統に,発電に係る基礎情報はトラッキングシステムに入り,利用を主張する主体がシステム内で償却することで,2重の利用主張を回避する仕組みである。欧州では,EU 加盟国の国が指定する証明発行機関の連合体が,運用規則やITシステムを共同で運用している。米国では,独立系統運用者(ISO)や地域系統運用者(TSO)がトラッキングシステムも運用し,電力とともに属性価値についても,相互に接続をしている。日本では,再エネの導入が遅れていたこともあり,トラッキングシステムは整備されていない。日本で再エネを企業が選んで購入しようとした場合,現在利用可能な方法としては,1)グリーン電力証書を購入,2)J-クレジット(再エネ由来)を購入,3)非FITの再エネメニュー(大規模水力)を購入,といった手段に限られている。なぜなら,FITによって買い取られた電力については,属性価値が国民に薄く広く分けられていることから,企業がその価値を契約によって主張できないと整理されているからである。経済産業省では,2018年5月から,2017年4~12月分のFIT再エネについて,非化石価値証書を発行し,日本卸電力取引所において小売電気事業者が購入可能とすることを計画している。これによって,4)FITの再エネメニューを購入,というオプションが加わることになる。非化石価値証書は,FIT再エネを購入可能とすることから,大変画期的な枠組みである。一方,再エネか非再エネか(原子力,大規模水力も非化石価値証書発行対象である)の別しか消費者は選択することができず,太陽光がいい,風力がいい,消費地に近い場所の電力がいい,といった選択はできない。RE100参加企業であるアップルなどでは,バイオマスについては持続可能な調達がされているかの基準があるかなど,再エネであればすべていいというわけではない。日本市場においては,満足のいく再エネ調達ができない状況は続く見込みである。本提案書では,日本においても,基礎的属性情報を含むトラッキングシステムを整備し,また,1)~4)の調達手段のすべてが一元的に管理され,ダブルカウントがないことをシステム上も明ら低炭素社会実現に向けた政策立案のための提案書技術普及編 グローバル企業による信頼性の高い再エネ調達のために平成30年1月かにする必要があることを提案している。そのために,LCSも参画し,経済産業省,環境省とも連携を図りながら,非FIT再エネについて自主的トラッキングの実証実験の進展を促すものである。(著者抄録)