抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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福島第一原子力発電所(FDNPP)事故の後に,大沼における非常に重要な遊漁対象魚のワカサギ(Hypomesus nipponensis)は,放射性セシウムによる食品安全性のために厳しく規制された。群馬県における放射性セシウムの輸送が不明確なため,遊漁者の減少に伴う漁業経済における大きな被害があった。FDNPP事故後の閉鎖性湖沼(主に大沼)の生態系におけるセシウム137の動態を解明するために,環境(周辺土壌,湖沼堆積物および湖沼水)および湖沼生物(植物,プランクトンおよび魚類)を調査した。セシウム137濃度の調査データを用いて,魚類と湖沼水におけるセシウム137の実効生態学的半減期を推定した。ワカサギと湖水におけるセシウム137濃度の減衰過程は,二成分減衰関数モデルによって良く適合した。セシウム137濃度は,ワカサギと湖水の間の動的平衡の状態に近づいたと結論した。しかしながら,ウグイ(Tribolodon hakonensis)におけるセシウム137濃度の減衰過程は,一成分減衰関数モデルに対してより良く予測された。プランクトンと魚の推定濃縮係数は,それぞれ10
1~10
2と10
3であった。スペシエーション分析により,魚におけるセシウム137の化学形態は,ほとんどが可溶態で占められていた。そして,土壌と堆積物においてはそれらと反対の傾向であった。温度躍層深さより底層への溶解セシウム137濃度の増加が停滞期に観察された。循環期間中の鉛直分布における粒子状および溶解セシウム137濃度は有意な差を示さなかった。本研究の科学的結果は現地での漁業規制と将来の懸念を解消するのに役立った。さらに,本研究の方法は国内外の他水域での調査研究に活用できる。(翻訳著者抄録)