抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
東日本大震災からの復興過程においては,「被災者の声」が重視されている。しかしながら,積極的に被害を訴えていない事柄がたしかに存在する。本稿が対象とするマイナー・サブシステンスはその典型例である。そこで本稿では,放射能汚染下で帰村に取り組む地域社会を対象とし,ヤマの汚染が生活に支障をもたらしているにもかかわらず,何ゆえに人びとは被害として積極的に提起しないのかを明らかにする。震災後のマイナー・サブシステンスをめぐっては,三重苦というべき困難な状況にある。第1に,生活上必要な資源にもかかわらず,高濃度の放射能汚染が見られる。第2に,放射能汚染をめぐる政策的支援の対象から漏れ落ちていること。そして第3に,日常的な食を介して人間関係に亀裂が生じていることである。このように明らかな被害が生じている。けれどもその被害は,積極的に語られ訴えられてはいない。なぜなら,これまでの自然利用のローカル・ルールが,被害の「意図的潜在化」を招いている。さらに,汚染された食への対応は,家族ごとの判断にゆだねられ「問題の個別化」が生じ,共通課題とすることが困難になっていることが明らかとなった。すなわち,災害からの復興を考えるにあたって,被害者が積極的に訴える被害だけでなく,人びとの生活経験をふまえてはじめて理解できる被害を提起していく必要があろう。(著者抄録)