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J-GLOBAL ID:201802248958925413   整理番号:18A0059346

コウライアカシタビラメの増殖技術に関する研究

Studies on Stock Enhancement Technology of the Three-lined Tonguefish Cynoglossus abbreviatus
著者 (1件):
資料名:
号: 32  ページ: 22-77  発行年: 2017年11月30日 
JST資料番号: X0405A  ISSN: 2185-9183  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 原著論文  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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コウライアカシタビラメはウシノシタ科に属す大型のシタビラメで,日本周辺では本州から九州沿岸の砂泥域に生息している。瀬戸内海中央部ではアカシタビラメ,イヌノシタとともに小型底びき網や刺網漁業の主要対象種であるが,近年,過剰な漁獲圧や環境変化等により漁獲量が減少傾向にある。本研究では,コウライアカシタビラメを対象とした種苗生産および放流による増殖技術の確立を目的として,飼育環境下における本種の産卵生態,仔稚魚の生理・生態的特性を調査した。さらに,海域での卵・仔稚魚調査と飼育での知見から,瀬戸内海中央部における初期生態の推察を試みた。第1章:個別飼育したコウライアカシタビラメ天然魚の産卵間隔,産卵数,産卵時刻等について調査した。4月下旬から6月上旬に4例すべてで14~22回の産卵が確認され,本種が多回産卵魚であることが明らかになった。産卵水温(13.7~19.9°C)や産卵頻度(44~81%)には個体差があり,産卵間隔に一定の傾向はみられなかったが,盛期には毎日産卵することが確認された。雌1尾あたりの産卵数は最大45~53千粒/日,期間中の総産卵数は334~521千粒であった。対照とした複数雌の群産卵区では,浮上卵率(0~100%)と卵径(0.96~1.10mm)は産卵期の進行とともに低下し,水温と負の相関が認められたが,個別産卵区では浮上卵率において相関が認められず,個体と集団の示す卵質傾向は異なることが示唆された。産卵時刻は14~0時と推定され,16~22時の産卵数が全体の7割を占めた。種苗生産用の良質卵を得る目的で,養成期間の異なる瀬戸内海産コウライアカシタビラメ親魚群(短期養成群:約1か月,長期養成群:12~17か月)を陸上水槽で養成し,自然産卵させ産卵数および卵質を調査,比較した。産卵は4月下旬,13°C台から始まり,6月上旬,概ね19°Cで終了し,この間ほぼ毎日産卵がみられた。雌1尾当たりの総産卵数は短期養成群,長期養成群でそれぞれ194千粒と537千粒/尾で,天然魚の孕卵数よりも少なかった。卵質を示す浮上卵率,卵径,仔魚の無給餌生残指数は産卵期が進むにつれて低下し,水温と負の相関関係が認められた。漁獲直後の天然魚でも良質卵は確保できたが,養成期間が1年以上の親魚群の方がより安定かつ計画的に採卵できると考えられた。コウライアカシタビラメの自然産出卵を用いて,各発生段階までの到達時間,ふ化までの所要時間およびふ化率に及ぼす水温の影響を調べた。13~24°Cの範囲で発生が進行し,ふ化仔魚が得られた。各発生段階への到達時間は,水温の上昇とともに指数関数的に減少し,ふ化開始までの所要時間は30時間30分~102時間であった。水温とふ化所要時間の対数との関係は,20°C付近に変曲点が認められ,変化率が異なった。正常ふ化仔魚が得られた水温範囲は13~24°C,そのうち50%以上の正常ふ化率を示した範囲は13~20°Cであった。最も正常ふ化率が高かった水温は15°Cおよび17°Cであった。これらの結果から,コウライアカシタビラメの卵発生とふ化に最適な水温は15~17°C付近と考えられ,岡山県における本種の自然産卵盛期の水温と一致した。第2章:コウライアカシタビラメ仔稚魚期の適正水温を明らかにするため,14,17,20°Cおよび自然水温(16~24°C)でふ化仔魚から着底稚魚まで飼育し,成長,生残,変態,形態異常に及ぼす影響を検討した。仔稚魚の成長は14°C<17°C≒自然水温<20°Cで,水温が高い順に速かった。生残率も14°C<自然水温≒17°C<20°Cと,水温が高いほど高い傾向があり,14°C区では飼育が困難であった。全ての水温区で眼位など頭部周辺と体色に形態異常がみられた。正常個体率は17°Cを最高に低温および高温側で低い傾向が確認され,自然水温で最低,次に20°C区で低かったことから,20°C以上では形態異常の出現率が高まる可能性が示唆された。本種仔魚の成長や変態を速め,稚魚の生残率と正常個体率を高める飼育適水温は17~20°Cと推察された。コウライアカシタビラメ仔魚の摂餌促進による初期減耗の軽減を目的とし,異なる日長条件(12,24時間明期)とワムシ密度(5,10,20,30個体/mL)による飼育試験を実施した。飼育にはそれぞれ200Lと500L水槽を用い,初期の摂餌状況と16日齢までの成長,生残を比較した。日長試験では,開口から5日間の24時間明期が12時間明期よりも仔魚の摂餌,成長,生残に優れた。ワムシ密度試験では20,30個体/mLの高密度区の成長,生残率が5,10個体/mL区より高かった。24時間明期と高密度給餌は,本種仔魚の摂餌を促進し,初期減耗を軽減する効果が認められた。コウライアカシタビラメ人工種苗に発現する形態異常の特徴を検討するため,眼位,体色等の左右不相称性5形質に着目して,96尾の稚魚を観察した。人工種苗は正常個体,両面有色個体,両者の中間的な形態を示す中間個体の3タイプに分けられた。これらの現象は,異体類全般に発現する変態異常と考えられたが,白化や逆位は出現しなかった。眼位と体色において,正常個体と両面有色個体の中間形が出現しやすいことが,本種の特徴である可能性が示唆された。これら中間個体においては,眼の移動と体色被覆が同期していない現象が確認できた。第3章:40kL大型水槽を用いたコウライアカシタビラメ人工種苗の量産試験を実施し,45日間の飼育で平均全長22.8mmの稚魚7.7万尾を得た。仔魚期の発育ステージDにおける浮上死やEおよびF~Hでの沈降死による減耗が顕著で生残率は約10%と低かったが,ワムシとアルテミア幼生主体の餌料系列など他の海産魚類と同様の方法で飼育可能と分かり,量産の見通しを得た。稚魚期の飼育では,生物餌料から配合飼料への切り替えが容易ではないこと,さらに他の異体類と同様に頭部周辺や体色等に形態異常を発現する可能性があることなど,今後の課題と技術開発の方向性を確認した。(著者抄録)
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