抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
縄文時代の社会を理解する上で,縄文人の人口動態とそれに及ぼす要因の解明は本質的な課題である。環境史研究によって復元される過去の気候変動と人口動態の関係を説明するには,生態学的な理論と方法論が役立つ。縄文時代の人口動態の特徴は,それ以外の時代に比べて,各地域では急激な増加と減少を示しつつあるにもかかわらず,全体では長期に低人口で安定していることである。それは,縄文人の生業および食文化に起因するものと思われる。本稿では,まず縄文人の生態学的なニッチを南川雅男ほか(1986)と米田穣(2013)による安定同位体分析の結果から俯瞰する。従来から,縄文人の主要な食物の一つとされてきたドングリについて,獲得に必要なエネルギーコストについて検討した。試算では,10人の縄文人が1年分のドングリのアク抜きに消費するエネルギーを得るために,1.2haの森林が消失すると見積もられた。この結果より,縄文人は主要な食料として,ドングリは利用しなかったのではないかという結論を提示する。縄文時代の中期前後に起こった気候変動と人口の急激な増減との関係は,縄文人による特定の食物(栗か豆)への過剰な依存をしたことが背景にあると考えられる。本稿において,縄文文明の崩壊は,縄文人と栽培植物との共生関係が強化される過程で,縄文人が多様な資源を柔軟に狩猟・採集する機会を消失していくことによって引き起こされたとの仮説を提示する。(著者抄録)