抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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近年,建築設計プロセスは,考慮すべき因子の増加によりますます複雑になっている。したがって,設計プロセスにおける簡素化は,タスクと不必要な作業を減らすためにより重要になっている。設計プロセス簡素化のツールとして,BIM(建築情報モデリング)は最近注目されている。しかし,BIMの設計作業簡素化に対する大きな期待にもかかわらず,BIMの有効性の定量的評価の欠如のため,建築産業へのBIMの実際の導入は非常に少ない。そこで本研究では,BIMで設計された7つの建物とBIMなしで設計された3つの建物を比較することにより,再作業の低減と設計流れの改善に対するBIM利用の有効性を評価した。準備として,10棟の建物の議事録の情報から,年代順の日付と内容を整理した。そして,内容を113個の設計作業項目に分類した。最初の解析は,工程表を用いた評価である。工程表は設計進展度の進捗を示すグラフである。BIM使用事例における設計進展度の平均は,BIM未使用事例のそれよりも設計プロセスの初期段階で高かった。そのため,BIM使用事例における設計プロセスの初期段階で,多くの設計作業項目が考慮されていることが明らかになった。次の解析は設計作業項目の研究タイミングの評価である。それは会議の平均タイミングとして表される百分率値である。BIMにおける研究タイミングは平均28%で,BIM未使用例の研究タイミングの平均は39%であり,それはBIMの利用が会議タイミングを前送りにすることを示した。次に,19の設計作業グループの研究タイミングの分析では,「16.構造性能」と「19.確認要請書の見積りと作成」については,設計プロセスの初期段階で検討された。また,113個の設計作業項目の研究タイミングの分析は,「46.梁サイズの決定」,「78.防火区域の検討」,「79.廊下の設計」,「94.床振動特性の決定」,「103.窓の設計(長さ/種類)」,そして「113.建設順位書の作成」が設計プロセスの初期段階で検討された。第3の解析は再作業の評価である。各会議で発生した再作業のタイプを明らかにした。タイプは「1.顧客の変更要請による再作業」,「2.設計者の変更要請による手戻り」,「3.他の設計項目の変更による再作業」そして「4.その他」である。本研究においては,BIM使用事例の再作業頻度は平均28%であり,BIM未使用事例のそれは平均19%であった。それは,再作業がBIM利用によって9%増加することを示した。しかし,インタビュー調査において,設計者は「BIM利用によって,設計段階で見過ごされ,建設段階でトラブルとなっている事例が発見され,設計段階で改善されている」と言っている。結論として,建築設計プロセスにおけるBIMの利用は設計作業の前負荷に有効であるが,設計作業の再作業を増加させる要因となる。しかし本研究における対象建物は10棟で,統計的解析結果というのは難しい。そして,基本設計段階での再作業の増加が,建設段階でのトラブルを予測し,それを避けることができるとすれば,実施設計を含めた検証が必要である。(翻訳著者抄録)