抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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芳香族系化合物による人工的汚染化土壌由来のフェナントレン分解コンソーシアムMixEPa4を構成していたフェナントレン完全分解Mycobacterium属EPa45株はフェナントレンによる生育阻害(GI)現象を示し,本現象はMixEPa4由来の非分解Burkholderia属Bcrs1W株共存で緩和されるSGI効果を見出していた。本研究では,両現象の更なる詳細な解析とともに,両現象の普遍的存在の有無の検討を実施した。EPa45株のゲノム解析で本株のフェナントレン分解経路と分解酵素・遺伝子を推定し,RNA-seq解析で本推定の妥当性を示した。本株のフェナントレンによるGI現象時には菌の細胞死がおきていた。この細胞死を惹起するひとつの可能性として,毒性のあるフェナントレン自体あるいはその分解中間産物でフタル酸以前の未同定毒性産物によって上昇した活性酸素種(ROS)の関与が示唆された。一方,Bcrs1W株のSGI効果発揮には,その生細胞のEPa45株との物理的接触が必要であった。また,B.multivorans ATCC 17616株を含む分類学的に広範な細菌株が生育阻害緩和(SGI)効果発揮能を備えていたが,各株のSGI効果強度はこれを検定するために用いた培地での各株の生育能強度と正の相関性を示した。他方,EPa45株とATCC 17616株の共存時にフェナントレンが存在すると,前者株での酸素ストレス除去系発現の上昇がRNA-seqデータの初歩的解析で示唆され,本除去系発現上昇に後者株が何らかの機構で寄与していると推定された。以上の研究で示唆・推定された点に関してEPa45株のフェナントレン非分解や耐性の変異株の取得・解析などで今後検討する必要がある。本研究ではさらに,EPa45株はフェナントレン以外に完全分解可能な他2種の多環芳香族炭水化物(PAH)に対しでもGI現象を示すとともに,本現象を上記2種のBurkholderia株が緩和できること,そして,3種PAHの完全分解可能な別のMycobacterium属細菌株もいずれのPAHに対するGI現象とこれらGI現象に対する2種Burkholderia株のSGI効果発揮を示した。このように,PAHによるGI現象とこれに対応するSGI現象に関しては,少なくとも研究対象にした2種Mycobacterium属細菌株で該当する知見を得た。(著者抄録)