抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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今後高い確率で発生が予想される南海トラフ地震は,太平洋沿岸都市を中心に甚大な人的・物的被害をもたらすことから,各自治体は,防災・減災対策を急いでいる.しかし,そのための諸計画は,必ずしも整合的に連動する体系となっていない.本研究では,防災のために処理すべき業務などを定めた地域防災計画を中心とした諸計画を対象に,災害に対してレジリエントな都市を形成するための活動を円滑に行うことのできる整合性の高い関係性について分析し,計画体系の方向性を明らかにすることを目的とする.具体的には,豊橋市,田原市,浜松市をとりあげ,1)被災する都市の構造に着目し,土地利用や社会資本・公共施設に関わる計画に着眼すること,2)関連部署間の連携を円滑に進める根拠とするために諸計画に明記されていることを原則とすること,3)地形や都市圏域内での位置づけなどの多様な都市の特性に沿って重要な整合性を見出すこと,に重きを置くこととした.また,対象とする計画は,レジリエントな都市形成の観点から,国土強靭化地域計画,社会資本総合整備計画,都市計画・マスタープラン,公共施設再配置計画,住宅・空家政策などとした.国土強靭化地域計画では,地域防災計画で示されている応援要請の具体的作業が,広域的な体制を整えるという表現で記載されており,さらに,地域防災計画に示されている整備の最終目標や,防災分野に加えて医療,経済,環境面からの方針などが記載されている.地域防災計画で示される具体的作業の方向性が対応付けながら記載されていることを確認することができた.都市計画マスタープランについてみると,浜松市では,避難所の整備方法等を記載しているものの整備を行う対象物の基準の記載が少なく,一方で,豊橋市,田原市では,整備方法を記載した上,避難所の選定基準についても記載している.基準をどの計画段階で明示するかの判断に自治体間の差異が認められた.公共施設再配置計画については,具体公共施設名を挙げ,「耐震化の必要あり」と記載された箇所はあったものの,津波の浸水域についての記載は明確ではなかった.公共施設の再配置箇所は,第一義的にはそのアクセシビリティや対象範囲の分布から定められるものではあるが,土地利用を誘導するものや津波襲来時の避難ルート等に関連するものとして,浸水域との関係は,比較的上位の計画段階で明確に記載される必要があろう.社会資本総合整備計画のある浜松市では,それぞれの事業が地域防災計画に記載されている整備の水準に従っていることを確認した.一方で,住宅・空家政策についてみると,浜松市では地域防災計画に住宅の予防に関する記載がないのに対し,豊橋市では耐震化促進に向けての具体的作業を記載している点,浜松市では応急仮設住宅に関して具体的作業を記載しているのに対し,豊橋市では住宅マスタープランに住宅の応急対策についての記載が見受けられない点,浜松市の住生活基本計画には住宅再建に関する具体的作業を記載されているのに対し,豊橋市では,住宅マスタープランに復旧についての記載がない点などを見ることができた.計画の整合のあり方として,1)構想・計画・実施という具体化構造の諸計画への展開のほか,2)複数の計画項目間の時空間的な一致,3)機能連携を明確に認識した計画整備などを整理し,各都市の諸計画が必ずしも整合性がとれていないことを指摘した.(著者抄録)
