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J-GLOBAL ID:201902243368181051   整理番号:19A2157899

量子スピン液体における半整数熱量子ホール効果-マヨラナ・フェルミオンと非可換エニオン

Half Integer Thermal Quantum Hall Effect in a Quantum Spin Liquid-Majorana Fermion and Non-Abelian Anyon
著者 (4件):
資料名:
巻: 74  号:ページ: 639-645  発行年: 2019年09月05日 
JST資料番号: F0221A  ISSN: 0029-0181  CODEN: NBGSA  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 解説  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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電子は電荷-eとスピン1/2を持ち,フェルミ統計に従う素粒子である.マクロな数の電子の集団が示す劇的な現象に,磁場中の2次元電子ガスで観測される整数および分数量子ホール効果がある.前者は電子状態のトポロジーという基本的な概念を生み出した.後者では電子間の多体効果により分数電荷の粒子やフェルミ統計ともボース統計とも異なる分数統計に従う粒子,エニオンなどの奇妙な準粒子が現れる.近年,量子スピン液体と呼ばれる状態を持つ絶縁体が注目を集めている.量子スピン液体では,量子ゆらぎの効果のために絶対零度までスピンは凍結しない.このスピン系においてキタエフ模型と呼ばれる興味深い量子多体模型が提案されている.スピン1/2が2次元ハニカム格子を形成し,キタエフ相互作用と呼ばれるボンドに依存したイジング型の交換相互作用が存在したとき,基底状態は厳密解を持った非磁性の量子スピン液体状態となるというものである.この量子スピン液体では,一個の局在スピンが量子力学的多体効果により他のスピンと強くエンタングルした結果,二種類のマヨラナ・フェルミオンが低エネルギー素励起に現れる.最近の研究で,ハニカム格子2次元磁性体α-RuCl3は,キタエフ相互作用を持ち磁場中で量子スピン液体の基底状態を持つ候補物質であることが明らかになってきた.我々はα-RuCl3の熱ホール効果を測定し,熱ホール伝導度が磁場に対して一定値(プラトー)をとり,その値が電子系の量子ホール効果状態で観測される値の半分の値に量子化されていることを示した.絶縁体スピン系における半整数熱量子ホール効果の観測は,系がトポロジーにより保護された状態にあり,通常のフェルミオンの半分の自由度を持つ中性の粒子,すなわちマヨラナ・フェルミオンが存在していることの決定的証拠となる.電子系の量子ホール効果では,電流および熱流は試料の端に形成されるエッジ状態の1次元伝導チャンネルによって運ばれる.エッジ流は,整数量子ホール効果では電子流であり,分数量子ホール効果では電子相関によって分数に量子化されたホール流である.これに対し半整数熱量子ホール効果状態では,遍歴するマヨラナ・フェルミオンのエッジ流により熱が運ばれる.つまりエッジ流が分数量子ホール効果では電荷の分割(分数電荷)に深く関係しているのに対し,半整数熱量子ホール効果ではスピンの分割(マヨラナ・フェルミオン)に由来している.さらにα-RuCl3では,高磁場で量子化は消失し,熱ホール伝導度は急速にゼロになる.これはマヨラナ・エッジモードを持つ状態と持たない状態の間のトポロジカル量子相転移の可能性を示唆している.半整数熱量子ホール効果は,試料のエッジから離れたバルクの状態において,非可換エニオンとよばれる特異な統計性を持つ準粒子の存在も示している.この準粒子は,量子情報を安定した形で保つことができると考えられているため,将来のトポロジカル量子コンピューターへの応用の可能性が注目されている.(著者抄録)
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分類 (2件):
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電子輸送の一般理論  ,  液体構造一般 
引用文献 (48件):
  • 1) D. J. Thouless et al., Phys. Rev. Lett. 49, 405(1982).
  • 2) 吉岡大二郎,『量子ホール効果』(岩波書店,2006).
  • 3) 中島龍也,青木秀夫,『分数量子ホール効果』(東京大学出版会,1999).
  • 4) X. G. Wen, Phys. Rev. B 65, 165443(2002).
  • 5) L. Balents, Nature 464, 199(2010).
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