抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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甘利山の半自然草原では,草原生植物の保全を目的として,草原の一部で市民やボランティアによる草刈りが行われている。一方,近年はニホンジカ(以下,シカ)の植生への影響が顕在化しつつあり,草原生植物の保全上の課題となっている。そこで甘利山において,人による刈り取り管理が草原群落の種構成に与える影響を調べるとともに,群落へのシカの出現に影響を与える要因を,人の利活用の影響も含めて明らかにすることを目的とした。人による刈取り管理が草原植生に与える影響を評価するために,刈り取り管理が実施されてきた群落と実施されていない群落で植生調査を実施した。シカの出現状況を把握するために,草原群落と周辺の森林群落に自動撮影カメラを設置し,シカの撮影枚数を記録した。撮影枚数はカメラごと,月ごと,昼夜ごとに集計し,撮影枚数に影響を与える要因を推定した。その結果,草刈りが継続的に実施されている箇所ではされていない箇所よりも優占種であるミヤコザサの植被率,植生高が低く,広葉草本種を中心により多くの種が出現した。シカの出現頻度は,人の撮影枚数が多い時期や場所では低くなり,草原よりも森林で,ミヤコザサの植被率が高い場所よりも低い場所で高くなった。季節では夏,昼夜では夜に高くなった。以上の結果から,人の活動が活発な場所・時期をシカが回避していると考えられた。一方,継続的な草刈りは優占種の植被率を低くし,シカの嗜好性が高い広葉草本も増加させる。そのため,シカの密度が一定以下に低減されていない状態での草刈りは,シカの草原の利用を増加させ,かえって草原植生の衰退を招く可能性もある。シカの密度が低減されていない場合は,刈り取りした場所では応急的に植生保護柵を設置するなどの対策が必要と考えられる。(著者抄録)