抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本稿は,U・グローバーのnachhaltigkeitをめぐる議論にきっかけを得て,19世紀以降の森林をめぐる社会構想を,「市場社会」という歴史的局面を背景にして生じたサステイナビリティの構想の一形態として捉え直し,「富を生む森」の探求が「負債を生む森」を広く生んでいくことになるまでの過程を,とくに現代日本における森林問題をとりまく歴史に沿って明らかにする。まず,近代社会におけるサステイナビリティの構想について概観したのち,その具体的な展開,およびその帰結について,K・ポランニーの「市場社会」の概念に示唆を受けながら,主として20世紀,高度経済成長期以降の日本社会での経験を例にとってたどる。そのうえで,「負債を生む森」が広がっていった背景として,森林所有者が関与していないところで描かれた構想によって生み出された市場社会が引き起こした大きな変化に,抵抗もできずに適応を迫られていくことになった不可避の結果だということを指摘する。最後に,このような点から振り返ると,今日,各地で新たに生起している森林の持続的な利用をめぐる多様な取り組みは,森林の利用をとりまいて生じる「義務と責任を担うことによる自由」を失った人びとによる「脱市場社会のサステイナビリティ」を模索する試みとして考えうることを明らかにしていく。(著者抄録)