抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
1976年に,永久方形区(30×30m)を小笠原(ボニン)諸島父島の中央山東平と呼ばれる山地高原の乾燥林に設置した。方形区における種組成と森林構造を10年毎(1986年,1997年,2007年,および2017年)に調査し,41年間にわたる森林の変化を記録した。合計で47の樹木種と潅木種ならびに25の草本種が方形区内に出現した。この森林は,樹木と灌木の高度な固有種比率(72.3%),多数の絶滅危惧種(42.6%),およびごく僅かな導入種(8.5%)により特徴づけられる。この森林は樹高に従い5層へ分割され,各樹木による層間の遷移を10年毎に追跡した。優勢な樹冠樹木のうち,ムニンヒメツバキSchima mertiana,ヒメフトモモSyzygium cleyerifoliumおよびマルバシャリンバイRhaphiolepis indica var.integerrimaはそれらの樹木数を維持していたが,アカテツPoueria obovataとシマイスノキDistylium lepidotumの数は41年の間に大きく減少した。成長し続けた樹冠木により,各樹木の樹冠は大きくなり,以前よりも森林床を暗くした。希少種および絶滅危惧種のうち,チチジマクロキSymplocos pergracilis,オガサワラクチナシGardenia boninensis,シマタイミンタチバナMyrsine maximowicziiおよびオオミノトベラPittosporum chichijimenseは1976年の存在数の半分以下に減少したが,その一方でシマムラサキCallicarpa glabra,オガサワラモクレイシGeniostoma fagraeoidesおよびハザクラキブシStachyurus macrocarpusは2017年までに方形区から完全に消失した。41年間の研究期間において得られたパラメータを用いた森林個体群動態のシミュレーションは,多数の絶滅危惧種が100年の間に絶滅することを予測した。草本種の数も,41年間の観察期間において著しく減少した。特に注目すべきことは,光要求種であるCarex bootianaとムニンクロガヤGahnia asperaの減少であった。気候に関しては,年間降水量が20%近く減少し,降雨の変動が第二次世界大戦前の気候条件と比較して増大した。加えて,厳しい旱魃が,41年間の研究期間において3回(1980年,1990年,および2016年)島を襲った。より乾燥した気候へ向かう近年の傾向が,本研究において記録された森林の変化の原因であると考えられる。(翻訳著者抄録)