抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本稿では,女性に再生産役割を期待しがちな農山村において女性移住者たちが抱えている戸惑いと,地域に関わりたい,村で暮らし続けたいという意思や実践が生み出されていく過程を考察した.本稿で対象とする福島県昭和村では,「からむし」と呼ばれる植物を素材とする織物作りが行われ,「織姫」と呼ばれる女性移住者たちが技術を学んでいる.「織姫には嫁として村に残って欲しい」という村民たちの期待は小さくなく,それが独身の織姫の疎外感に結び付くことがある.また,経済的に不安定であることが,彼女たちの「刹那的な場所感覚」を形成していた.しかし織姫は,栽培農家とからむしを育てることを通じて,そこに埋め込まれた地域の記憶や,栽培農家に対する理解を深めていった.村の文化を次世代に伝えたい,村で暮らし続けたいという織姫の生き方は,性別役割とは別の形で地域に関わるものであり,彼女たちが去った後も村に影響を及ぼしている.(著者抄録)