抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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地球は,液状水と生命が,地質時代を通して存在している唯一の惑星である。したがって,その初期生命を理解するために,初期地球の表面環境を調査することは重要である。しかし,地質学的証拠の欠如のため,初期地球の環境についてはほとんど知られていない。最近,ヌリアック表成岩と呼ばれる炭酸塩岩を含む3.95Ga以上前の表成岩が,北ラブラドルのサグレック岩体で発見された。最も古い表成岩からの初期地球の海水組成と生命の痕跡について調査した。炭酸塩岩が,サグレック岩体の4つの地域で産出し,変成チャートと変成泥質岩または変成帯状鉄形成と変成玄武岩を伴っている。それらはすべて,角閃石やグラニュライト相条件(>500°C)下で地域毎に変成され,角閃石や輝石のような変成鉱物が生成された。炭酸塩岩の主元素,微量元素,希土類元素について全岩石組成を評価した。炭酸塩岩は,微量のAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>,ZrとBaを含むCaO,MgO,FeO,およびSiO<sub>2</sub>から成っている。砕屑性岩や火山性材料が,それらの組成に影響を及ぼすのを避けるために,低Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>(<0.2wt.%),Zr(<2ppm)およびBa(<5ppm)含有する炭酸塩岩を選択した。砕屑岩フリー試料のPost-Archean Austrakian Average Shale(PAAS)で規格化された希土類元素(REE)パターンは,フラットパターンか,La,Eu,Yの正異常を持ち,Ce異常を伴わないわずかに軽REEが枯渇したパターンを示す。LaとYの正異常は,炭酸塩岩が海水から沈殿した化学的堆積物に由来していることを示す。Ce異常の欠如は,初期太古代の海水が無酸素であったことを示している。泥質岩を伴う炭酸塩岩は明白なEu異常を有することから,大陸近辺の海水でもEu異常を有し,熱水流入により広く支配されていた。St.JohnのHarbor南,St.JohnのHarbor東,Shuldham島,Big島の炭酸塩岩の中の泥質岩,礫岩,炭酸塩岩,チャート塊は炭質物を含むが,Pangertok Inletの堆積岩には炭質物は見られない。泥質岩と礫岩のいくつかは,-28.2‰を底とする低いδ<sup>13</sup>C<sub>org</sub>値を有し,それは,イスア表成岩帯炭質物のδ<sup>13</sup>C値の最小値に匹敵している。泥質岩中炭質分のδ<sup>13</sup>C<sub>org</sub>値は,全有機炭素含有量と弱い負の相関を示す。一方,炭酸塩岩中の炭酸塩の炭素同位体値(δ<sup>13</sup>C<sub>carb</sub>)は-2.6‰から-3.8‰の範囲である。δ<sup>13</sup>C<sub>org</sub>値は,変成度合いと正相関があり,全有機炭素含有量とは負の相関関係である。この相関は,δ<sup>13</sup>C<sub>org</sub>値の変動が,恐らく変成作用中の炭素損失に起因していることを示している。δ<sup>13</sup>C<sub>carb</sub>とδ<sup>13</sup>C<sub>org</sub>値間の大きな,最大25%の分別は,3.95Ga以上前の生物に対する最古の証拠であると結論した。(翻訳著者抄録)
