抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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ルワンダは,西アジアから続く乳文化圏の南端にあり,乳文化のアフリカ大陸における伝播・変遷を検討するにおいて極めて重要な位置にある。そこで本稿は,ルワンダの乳加工体系を現地調査により把握し,ルワンダの乳加工技術の特徴を明らかにすることを目的とした。2018年3月に農牧複合民9世帯を対象にルワンダで広域調査をおこなった。ルワンダの乳加工体系は,生乳を加熱殺菌することなく,自然に混入してくる微生物叢を利用して生乳を自然発酵させる発酵乳系列群・非加熱乳酸発酵亜系列の乳加工技術を採用していた。ルワンダの乳加工体系の特徴は,生乳からバターとして乳脂肪を分離・保存する技術を採用するが,チーズとして乳タンパク質を分離・保存する技術は欠落しているところにある。ルワンダで乳タンパク質の分画・保存技術が発達しなかった理由は,家畜の周年繁殖性および生乳の周年供給性によっていると考えられた。チーズを加工・利用しないため,ルワンダの食文化は,自然発酵乳とバターミルクが炭水化物含量の多い食事と一緒に摂取される食事体系となっている。ルワンダの乳脂肪の分画・保存技術での特徴は,バターが最終形態となっていることである。ルワンダが高原に位置し,一年を通じて比較的冷涼な生態環境にあることから,バターが乳脂肪の分画・保存の最終形態となったものと考えられた。ルワンダの人びとのバターに対する認識は,長期保存が可能であるかどうかというより,料理に添加した際に香りが良くなり,味覚が向上するかどうかという香りの強弱を基準にしており,ルワンダを含むアフリカ大陸内陸部赤道付近高原地域は極めて特異的な乳文化を発達させてきたと言える。(著者抄録)