抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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ブータン西部のワン・チュ流域の海抜200mから3800mまでの植生の垂直分布を調査し,流域を8つの植生タイプ(植生帯)に区分した:1)亜熱帯半常緑樹林(<1100m),2)暖温帯照葉樹林下部(1100-2000m),3)暖温帯照葉樹林上部(2000-2800m),4)冷温帯針広混交林(2800-3200m),5)亜高山帯(亜寒帯)針葉樹林(3200-4000m),6)高山帯(寒帯)低木群落(4000m<),7)乾燥マツ林(ブルーパイン型)(2000-2800m),8)乾燥マツ林(チャーパイン型)(1500m>)。1)~6)は湿性環境の植生,7)と8)は乾燥谷に成立する乾性植生である。この地域には,世界の植物地理区の全北界日華区系と旧熱帯界インド区系の境界が通っている。一般に,日華区系は暖温帯照葉樹林を含んだ範囲を指すと理解されているが,植物地理区の本義に従えば,第三紀周北極植物群を源とする落葉樹・温帯性針葉樹が日華区系の主要部分であり,熱帯・亜熱帯を源とする照葉樹林は旧熱帯界の側に位置づけるべきものである。東アジア全体の冷温帯夏緑樹林の成立過程を考えると,冬の気候が穏やかな中国南部が多様性のセンターであり,西へ行くほど乾燥の影響,北へ行くほど寒さの影響が現れて,多様性は減少する傾向にある。ブータンは西の端,日本は北の端に近いので,ブナ科の種数で見た多様性は,ブータンと日本であまり変わらない。しかし,高所まで照葉樹林の影響の及ぶブータンでは夏緑樹林が発達しないのに対し,日本では,第三紀周北極植物群の多くが生き残り,日本海側の多雪環境に適したブナが存在したため,日本特有の豊かな冷温帯夏緑樹林がつくり出された。(著者抄録)