抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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プロキラルであるアセト酢酸メチルの不斉還元合成の際に,鏡像体の一方のみを効率的に生成する触媒の不斉修飾材として用いられるL-酒石酸ナトリウムのNa(1s,2s,2p)電子に関わるX線光電子(Na(1s,2s,2p)XPS)スペクトルをそれぞれ測定した。また,その関連化合物として,種々のナトリウム化合物の測定を行い,それぞれの比較からナトリウムイオンが関わる化学結合状態を明らかにした。XPSスペクトル測定時に,Na(1s,2s,2p)電子に関わるオージェ電子(Na KLL AES)スペクトルのエネルギー領域も測定し,ナトリウム化合物のオージェパラメータを求めた。これらの検討により,不斉修飾材として最も高い光学収率を与えるL-酒石酸ナトリウムが他のナトリウム化合物よりかなり大きな値のオージェパラメータを有していることがわかった。それに対し,L-酒石酸ナトリウムにアセト酢酸メチル(MAA)を付加するとその値は低下し,他のナトリウム化合物とほぼ同じ値となった。さらに,L-酒石酸およびそのアルカリ金属塩(Li,Na)については,炭素原子と酸素原子のK吸収端X線吸収スペクトル(C,O K-edge XANES)を測定した。XANESスペクトルのエネルギー分解能は,XPSスペクトルよりもかなり高いため,L-酒石酸塩単体間だけでなくL-酒石酸塩とそのMAA複合体のスペクトルとの比較も行った。L-酒石酸塩単体と複合体のスペクトルピークの形状は,外殻のNa(2p)電子が関与するスペクトルを除きそれぞれ互いによく似ていた。これらの結果より,MAA付加によりナトリウムイオンの最外殻の電子状態がわずかに変化し,それをNa(2p)XPSスペクトルピークやオージェパラメータから確認できたと考えられる。(著者抄録)