抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
大阪府北部の兵庫県との府県境に位置する三草山(標高564m)には,ナラガシワやコナラ,クヌギなどの落葉カシ類を主体とする里山林が残され,ヒロオビミドリシジミやウラジロミドリジシジミなど10種のゼフィルス類の生息が確認されている。この山の南東側斜面約14.5haの里山林は,1992年に大阪府の緑地環境保全地域に指定されるとともに,(公財)大阪みどりのトラスト協会(以下,OGT)により「三草山ゼフィルスの森」(以下,MZC)として,チョウ類を指標とする植生の管理が行われている。著者らは,MZCにおいて2015年にチョウ類のトランセクト調査を実施し,その結果を1992,1995,1999,2001,2004の記録(それぞれ,石井ほか,1995,2003;Nishinaka&Ishii,2006,2007)と比較することで,開設以来の群集構造の変化を解析した。2015年の調査では5科42種のべ1,222個体のチョウ類が確認され,優占種はヒカゲチョウLethe sicelis(435個体),クロヒカゲL.diana(363個体),サトキマダラヒカゲNeope gaschkevitschii(198個体)で,幼虫がササ食で成虫が樹液食のこれら3種のヒカゲチョウ類のみで全体の約82%を占めた。これに対して,幼虫がスミレ食で成虫が花蜜食のメスグロヒョウモンDamora saganaなど3種のヒョウモンチョウ類は6個体と極めて少なかった。1992年から2015年の24年間の変化を見ると,種数(41~49種)では一定の傾向は認められなかったが,密度は1995年に13.4に低下した後に増加し,2015年に37.8と最高値を示した。逆に,平均多様度H′は1995年に4.6と最高値を示した後は徐々に低下し,2015年は2.7と最低であった。種別に見るとヒカゲチョウ類3種が増加傾向を示したのに対して,草本食・花蜜食のメスグロヒョウモンDamora saganaやダイミョウセセリDaimio tethys,木本食・花蜜食のイチモンジチョウLimenitis camilla,キタキチョウEurema mandarina,カラスアゲハPapilio bianor など多くの種で減少傾向が認められた。これら結果は,MZCの下層植生において,ネザサPleioblastus chino var.viridisが繁茂する一方で花蜜食のチョウ類の寄主植物や蜜源植物が衰退しつつあることを示すと考えられ,大阪府北部で密度の高まったニホンジカの影響が示唆される。(著者抄録)