文献

J-GLOBAL ID：202002228298461799   整理番号：20A1043347

水浸出土木製遺物の保存処理における溶媒蒸発を用いた薬剤含浸の効率化の可能性

Possibility of Solute Impregnation Method for Waterlogged Wood by Controlling Solvent Evaporation

著者 (3件)： 松田和貴 (奈良文化財研) ,  脇谷草一郎 (奈良文化財研) ,  高妻洋成 (奈良文化財研)
資料名： 保存科学  (Science for Conservation)
号： 59  ページ： 73-88,1(6)-1(9)  発行年： 2020年03月31日 
JST資料番号： Y0449A  ISSN： 0287-0606  資料種別： 逐次刊行物 (A)
記事区分： 原著論文  発行国： 日本 (JPN)  言語： 日本語 (JA)

抄録/ポイント： 水浸木材の保存処理において,安定化のための木材への溶質の含浸は木材全体を化学溶液に浸漬することによって処理することができる。しかし,一般的に拡散による溶質の浸透は非常に遅いため,プロセスの効率は厳しく制限される。これまでに含浸プロセスの効率を高めるために水浸木材の含浸剤としてさまざまな種類の化学物質が提案されてきたが,含浸の原理自体は大きく変わっていない。本研究では,従来のものとは異なる原理に基づいて水浸木材に化学物質を含浸させる効率的な方法を検討した。含浸剤としてPEGを用いた予備実験の結果,上部を空気に曝した状態で水浸木材を溶液に浸漬すること,および溶媒の温度と蒸発速度を制御することによって移流による溶質の浸透と蓄積が効率的に進められることが示唆された。また,PEG固化後の木材サンプルの寸法安定性も優れていた。実験はまた,溶液が木材に吸収される速度を超えないように溶媒蒸発速度を適切に制御する必要があることも示唆した。木材内部の溶液の浸透性は,木材の構造,木材の劣化の程度および溶液の粘度に影響を受けると考えられる。(翻訳著者抄録)

シソーラス用語： 浸潤 ,  *木製品 ,  含浸 ,  ポリエチレンオキシド ,  蒸発 ,  毛管現象 ,  寸法安定性 ,  移流 ,  粘度 ,  相対湿度 ,  蒸発速度 ,  凝固 ,  X線CT ,  注入剤 ,  保存 ,  蒸気圧 ,  処理 ,  断層画像
準シソーラス用語： ポリエチレングリコール4000 ,  含浸剤 ,  固化 ,  *出土木製品 ,  水浸潤 ,  文化財保存 ,  保存処理 ,  溶媒蒸発

分類 (1件)： 木質材料の製造・加工一般  (FF05031B)

引用文献 (8件)：

• Herbst, C.F. : Om Bevaring af Oldsager af Traefundet Törfemoser, Antiquarisk Tidskrift, Kopenhagen, 1858-1860 (1861)
• B.B. Christensen : The Conservation of Waterlogged Wood in the National Museum of Denmark (1970)
• 岡田文男、 肥塚隆康、 沢田正昭、 吉田秀男 : 高級アルコール法による出土木材の保存処理、 古文化財の科学、 37、 12-20 (1992)
• 今津節生 : 糖アルコールを用いた水浸出土木製品の保存 (I) 糖類含浸法とPEG含浸法の比較研究、 考古学と自然科学、 28、 77-95 (1993)
• 伊藤幸司、 藤田浩明、 今津節生 : 糖アルコール含浸法からの新たな展開-トレハロースを主剤とする出土木材保存法へ-、 日本文化財科学会第27回大会研究発表要旨集、 152-153 (2010)

タイトルに関連する用語 (7件)： 遺物 ,  保存 ,  溶媒蒸発 ,  薬剤 ,  含浸 ,  効率化 ,  可能性