抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究はフィリピン共和国において制定された1991年地方政府法の施行がもたらした地方財政と地域開発への影響を明らかにすることを目的とする.主たる研究方法は前者が地方財政に関する統計データ分析とし,各地方政府における歳入面から検討した.後者は同国ルソン島北部に位置するベンゲット州とイフガオ州にて2005年10月に実施した聞取り調査の結果を中心に考察した.その結果,以下のことが明らかになった.まず地方財政に関しては,1991年地方政府法の制定によって地方の財政規模が拡大していること,それ以前に存在していたマニラ首都圏とマニラ首都圏以外の地域における格差が縮小していること,しかし歳入の構成要素からは自主財源が占める割合が低下し中央政府から配分される依存財源の割合が高まったことが明らかになった.また地域開発に関しては,地方分権化によりインフラ整備における優先順位を,地域の実態を知る自治体主導で決定可能になったことが評価された.しかしながらその一方で,移管された業務の実施能力が自治体に養成される以前に分権化された結果,分権化により開発が進んだ自治体と,かえって後退した自治体に二分されることが明らかになった.それらは1991年地方政府法の制定から施行まで数か月の期間しかなかったこと,分権化に対応しうる自治体における仕組みづくりが十分になされないまま行財政が移管されたことによる自治体内部の混乱,業務移管に伴う中央政府からの技術力やノウハウの移転が不十分であったことなどに起因しており,その結果,地方分権化による恩恵およびその評価は自治体間でも差異が生じることとなった.(著者抄録)