抄録/ポイント：
抄録/ポイント
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本論文の主題は,アメリカの住宅研究家/発明家コーウィン・ウィルソンによって提唱された「移動住宅」を建築するという提案である。1930年代に,ウィルソンは,大恐慌における住宅問題を解決するために,車輪上に住宅を建設することを提案した。彼のデザインは,その時代に人気が出てきた旅行者用トレーラに基づいて開発された。以前の研究では,建築物のプレハブ分野における革新として,移動住宅の提案を評価した。しかし,提案の背後にある思想または理論は詳細に解明されていない。ウィルソンの思想に光を与えるために,本論文では,以既往の研究では取り上げられていない,1930年代からの彼の著作を調査し,1936年に設立されたトレーラジャーナルであるトレーラ旅行マガジンに発表された彼の論文に焦点を当てた。これらの論文でウィルソンは,広い歴史的および社会的文脈での提案として移動住宅を位置づけ,移動住宅のコミュニティ,移動住宅のための建設システム,およびそれらに対する法律のような先進的な問題を議論していた。最初の2つの論文において,ウィルソンは,トレーラと移動住宅の歴史的および社会的位置付けを議論した。彼の見解では,それらの人気は一過性のものではなく,人類の基本的欲求の現れであり:感情である。彼によると,前史時代においては,ほとんどの人類の住居は移動性であった。しかし,記録された歴史の始まり以来,それらは固定住居にとって変られた。また,ウィルソンは,先史的および基本的特性に加えて,トレーラおよび移動住宅が,貴族的なヨーロッパのものに対比して,真に民主的なメリカの性格を生み出すと主張した。彼のその他の論文で,ウィルソンは前述の主張に従って先進的な問題を論じた。例えば,彼は,全てが車輪上の建物から成るコミュニティ,即ち「移動町村」の可能性を示唆した。彼の観点では,このようなコミュニティは,狩猟と収集に基づく小型で生産的な古代コミュニティに似ており,それは,後年の固定居住型大都市によって置き換えられた。彼の「移動町村」は,自動車工学のような新技術によって支援されたこの種のコミュニティの更新版である。さらに,移動住宅のための建設システムに関して,彼は,「古代民主工学技術」との類似性を指摘した。また,建設システムを,テント構造の引張理論によって特徴付け,そして,記念建築物の圧縮理論と対比した。結論として,移動住宅を建設するウィルソンの提案は,建築物のプレハブ技術の開発だけでなく,上述の理論背景に基づく社会的改革の手段でもある。この点に関して,フランク・ロイド・ライトの広域福祉都市のような,大恐慌における理想郷プロジェクトの提案の一つと考えることができる。しかし,土地の理想化に基づいたライトの提案とは対照的に,ウィルソンの提案は,土地から解き放たれた移動性の理想から,その一意性を誘導したものである。(翻訳著者抄録)
