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J-GLOBAL ID:202002254073348586   整理番号:20A2182967

二次元有機導体の超伝導発現機構

Mechanism of Superconductivity in Two-Dimensional Organic Conductors
著者 (3件):
資料名:
巻: 75  号: 10  ページ: 625-630  発行年: 2020年10月05日 
JST資料番号: F0221A  ISSN: 0029-0181  CODEN: NBGSA  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 解説  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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1911年に低温下の水銀で発見されて以来,超伝導は物性物理学の主要なテーマとして研究されてきた.通常の金属状態からの相転移によって電気抵抗がゼロになり,マイスナー効果(完全反磁性)や磁束の量子化などの特異な現象を示す.超伝導は電子が2つずつクーパー対と呼ばれるペアを形成し凝縮することで実現するが,本来クーロン斥力で反発する電子がどのようにしてクーパー対を作るのか?新たな超伝導物質の開発や転移温度の向上のためにも,その発現機構の解明は重要課題である.超伝導物質の中でも特に高い転移温度を持つ銅酸化物高温超伝導体では,クーロン斥力によって電子が局在したモット絶縁体相に隣接して超伝導が現われ,電子スピン間の反強磁性相互作用がクーパー対形成のカギになると考えられている.本稿の主題となる有機導体の代表的な物質群κ-(ET)2Xでもモット絶縁体相に隣接して超伝導が現れる.この系は銅酸化物と類似の二次元的な電子構造を持つため,同様のスピン間反強磁性相互作用による発現機構が提示され,しばしば「モット絶縁体近傍の超伝導」という共通の位置づけがされてきた.しかし近年,これらの二次元有機導体のモデルにおける超伝導相の安定性を疑問視する理論研究が複数発表され再検討が求められている.またκ-(ET)2Xで発現する物性一般において,上記のスピン自由度のみならず電荷自由度の重要性も実験・理論双方から指摘されている.さらに,銅酸化物と異なり本系に特徴的な三角格子構造による幾何学的フラストレーション効果も重要である.これら複数の要因からκ-(ET)2Xではモット絶縁体と超伝導に加えて電荷秩序・量子スピン液体といった創発現象も見られる.超伝導発現機構の解明にはこれらも含めた総合的な理解が必要であり,その上で初めて物質開発や新物性探求へのフィードバックが可能になる.そこで我々は,従来のモデル化で無視されがちだったκ-(ET)2Xに特有の分子配列を取り込んだモデルを精密な数値計算によって解析した.反強磁性モット絶縁体,超伝導,複数の電荷秩序が競合した基底状態相図が得られ,超伝導は電荷秩序の近傍で安定化することが分かった.これは従来の有機導体における超伝導発現機構に一石を投じるものであり,スピン間の反強磁性相互作用に加え電荷の揺らぎが不可欠であることを示す結果である.また,最近の電子数制御の実験的展開に対応する計算も行った.電子数変化による各秩序相の安定性の敏感な変化を見出し,超伝導ギャップの対称性が入れ替わる可能性を提示した.具体的には,銅酸化物のモデルで見られるd波一重項状態と,κ-(ET)2Xの三角格子構造に適合した拡張s+d波一重項状態と呼ばれる異なる対称性の超伝導相が競合する.電子数変化によって電子構造が変化し,幾何学的フラストレーションの度合いも変わることで両者の安定性が入れ替わるのである.これら一連の解析によって,κ-(ET)2Xでは分子配列によってもたらされる電荷の揺らぎとスピンおよび電荷自由度における幾何学的フラストレーションが超伝導発現に重要な役割を果たすことが分かった.複数の状態がエネルギー的に拮抗し,わずかなパラメータの変化でそれらを行き来する状況のため,精密な数値計算によって初めて定量的に統一的な描像を得ることができた.本研究が有機導体の超伝導発現機構に新たな視点を与え,他の物質系に対する理解を深める結果にもつながることを期待したい.(著者抄録)
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超伝導の基礎理論  ,  有機化合物の電気伝導 
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