抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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リンゴ産地では,担い手の減少や樹園地の縮小による放任園増大への対応のため,樹園地流動化を進めることが求められている.しかし,樹園地は,農地と樹体の合体資本であることから,農地の評価が難しいこと,樹体管理が停止すると直ちに樹園地価値が低下すること,樹園地は生産者固有の技術が投下されていること,特に貸借の場合,借り手が投下した樹体投資から生じる利益の帰属問題などにより,水田などと比較すると流動化が難しい.本稿では,他の果樹産地と比較しても担い手の減少,樹園地の縮小が著しいリンゴ産地において行われているJAながの「園地リース事業」による樹園地流動化システムを事例として,当該事例における樹園地流動化方策の特質を分析する.加えて,筆者らが行った2011年および2019年の現地調査から,当初の課題への対応と実績を明らかにするとともに,2時点間比較することを通して,産地における意義を分析する.分析の結果,本事例では,第1に担い手発掘,第2に生産力向上,第3に優良園地の保全,第4に新技術の普及に効果を挙げていることが明らかになった.これらのことから,JAながの「園地リース事業」の取り組みは,産地革新を先導するものであったとも評価されるため,1)園地の需給調整,2)耕境判断,3)生産力向上,といった機能を備えた構造でありながら優良園地を確保している点が樹園地流動化システムとしての特質を有していることが指摘できる.また,産地における意義として,果樹産地の維持・発展には,担い手確保や園地再生等の生産面だけでなく,共販率向上による選果場の維持,新技術の普及に伴う生産物の品質向上といった販売面の問題にも対応していることが指摘できよう.(著者抄録)