抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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降り積もる雪に心躍る経験は,多くの方がお持ちだと思います。実験系の方は,蒸着装置をお使いかもしれません。wet系生物実験なら,バクテリアコロニーを目にする機会があるでしょう。これらはみな,粒子や細胞からなる領域が成長していく非平衡過程です。何となく似ているだけに思える,こうした現象たちが,実は深遠な普遍的法則で繋がっているとしたら?それが成長過程だけでなく,他の非平衡多体問題,さらに純粋数学にまで関わっていたら?これが本講義ノートのテーマ,KPZ普遍クラスの面白さの一片です。成長には,ゆらぎが伴うことが珍しくありません。このとき,多くの場合に,成長領域の界面には臨界現象のようなスケーリング則(ただし,その非平衡版)が現れます。Kardar-Parisi-Zhang(KPZ)普遍クラスは,中でも最も重要とされるクラスです。非線形な非平衡多体問題ゆえ,厳密に解けないと思われてきましたが,1次元系に対しては,2000年,常識が覆りました。それから約20年,KPZは,ポリマー模型,交通流,ボース多体系,ランダム行列,組合せ論,確率論など,様々な話題と関わりながら進展を続け,実験的検証もなされました。本講義ノートでは,成長界面,特にKPZの非平衡スケーリング則について,基礎から現代的展開までの概略を扱います。数理的側面より,物理としての結果や直感を重視しつつ,何が驚きか,何が謎として残されているかも手短に言及します。(著者抄録)