抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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海水の成分であるNa
+,K
+,Cs
+,Mg
2+などのカチオン及びCl
-,Br
-,SO
42-等のアニオンとともにLi
+,希少金属イオン,重金属イオンを捕捉・分離し,回収(除去)することは,海水の有効利用,金属資源の活用や汚染物質の除去とともに,自然環境保護や地球環境の維持などの観点からも重要である。これらの金属イオンやアニオンの回収は,これまで主にイオン交換樹脂による分離とICP-MS分析法等を利用して行われてきた。しかし,微量化学種の回収と検出のためには,濃縮等の前処理が必要であり,かつ特に有害物質の存在状態の分析には,こうした従来法では有意の情報が得られない。我々は,これまでにAgNPやAuNPと,種々の金属カチオン及びハロゲン化物などのアニオン等溶液中の分析対象化学種との静電的な相互作用を制御し,対象化学種を高効率で捕捉し,それらのイオンの水和状態や,ナノ粒子との相互作用を詳しく分析するflocculation-SERB法を開発してきた。本研究は,この研究成果に基づいて,海水中に含まれる種々のイオンや有機分子を,表面をイオン性化学種で修飾したAuNP,AgNPとの静電的な相互作用や,配位結合等の化学的相互作用を制御・利用して,高効率に捕捉し,原料水から凝集体として,あるいは分散溶液から遠心分離法により除去する。分離された「対象化学種が吸着した金属ナノ粒子(MNP)」に対して,高感度ラマン分光を用いて,化学種の存在状態を分析する。金属ナノ粒子は,溶液のpH制御により,対象化学種を脱離させることで,再利用する手法の確立を日指して検討を行った。その結果,海水中のNa
+,Cl
-のほか,Mg
2+,Ca
2+,SO
42-はそのままで前処理なしに捕捉・除去できることが実証された。それら以外のCd
2+,Co
2+,Cu
2+,Zn
2+,Fe
2+,Mn
2+を含む遷移金属カチオンも,1価金属イオンは10mM,多価金属イオンは0.1-0.3mMの濃度まで濃縮することで捕捉除去が可能であることが明らかになった。さらに,分析対象イオンの存在状態を溶媒和する水分子のラマンスペクトルに基づいて解析できることを見出した。生体高分子や有害有機分子のモデル化合物として,DNA・RNA塩基を取り上げ,クエン酸還元法とソリューションプラズマ法など異なる方法で調製したAuNPを用いて,10
-7-10
-8Mの水溶液からの捕捉・検出が可能であることを見出した。幅広い試料系に適用するために重要なAuNP,AgNP表面電位と孤立分散性の制御法の指針を得た。(著者抄録)