抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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あらゆるものが文化遺産となりうる現代,国内でも遺産制度の拡大や新設が相次いでいる。文化財保護法の重要無形民俗文化財に2004年に追加された民俗技術というカテゴリーは,モノや環境だけでなく生産活動までを文化財の対象とする契機であった。本稿の事例である三重県鳥羽市の海女漁は,2017年に国重要無形民俗文化財に指定されたほか,地域資源として「振興」が目指されている。先行研究では遺産化による価値やかかわりの序列化の危険性が指摘され,いかに対象と地域社会との社会経済文化的な「つながり」を再構築しうるか,地域社会はいかにかかわりのレジティマシーを獲得しうるかが検討されてきた。本稿では高度に身体化された人間の生産活動が文化遺産や地域資源の対象となるとき,この問題にいかなる論点を加えられるのかを検討した。示唆されるのは,文化遺産や地域振興の文脈において生業システムが組み換えられ,外的介入によってレジティマシーの複数性やその矛盾,生業従事者の社会的分化が生じた結果,ガバナンスのしくみが変容しつつあることだ。身体化された生業においては,日常的な生業や社会生活のレベルでの共同性のありようや,遺産の客体であると同時に主体でもある海女の「変化の社会的コントロール」の可能性を探りながらガバナンスのありかたを探ることが重要である。(著者抄録)