抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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平成28年熊本地震では阿蘇谷(阿蘇カルデラ内の阿蘇中央火口丘より北側の地域)においても農地に亀裂や段差が発生し,修復工事が計画された。しかし阿蘇谷の一部の土壌の下層には,黒泥状を呈し,空気に触れて酸化すると硫酸イオンを生成し,強酸性を示すパイライト(FeS
2)に富む土層(以後,「酸性硫酸塩土壌」と呼ぶ)が分布することが報告されている(川崎,1982)。そこで,修復工事が予定されている阿蘇市内の2工区について各5圃場で土壌を採取し,酸性硫酸塩土壌の判定のため,過酸化水素処理した土壌のpH(pH(H
2O
2))を測定した。工区1ではpH(H
2O
2)が1.0を下回る強い酸性を示す土層が存在し,作土付近にも出現したが,工区2ではpH(H
2O
2)が3.0程度の土層のみで比較的酸性は弱く,出現する深さも80cm以深と作土付近での出現は確認できなかった。酸性硫酸塩土壌の土色は緑色を帯びた黒色が多く,酸性硫酸塩土壌と判定された土壌のほとんどで泥炭物質(ヨシなどの植物遺体)が確認された。また,pH(H
2O
2)が2を下回る土層では刺激臭(腐卵臭)が確認できた。現場においても,土色,泥炭物質の有無,臭いで酸性硫酸塩土壌を簡易的に判定できる可能性が示された。以上の結果については,農地の修復工事を担当する熊本県阿蘇地域振興局に報告した。また,酸性硫酸塩土壌の中和石灰量は,上記のpH(H
2O
2)測定に用いた土壌抽出液中のイオウ(S)濃度(H
2O
2処理S濃度)から推定可能であった。pH(H
2O
2)0.87~2.56の場合,中和石灰量は乾土重量に対して5%~30%となり,修復工事により酸性硫酸塩土壌が大量に土壌表面に露出する可能性は低いと考えられるものの,莫大な量となった。(著者抄録)