抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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2018年における車両相互の交通事故のうち,追突事故は約35%ともっとも多い。また2007~2012年における停車中の車両に対する追突事故のうち,約13%が多重事故に発展しており,追突事故における被害低減対策が重要である。追突事故では,衝撃により被追突車において運転者のブレーキ操作が中断することがある。その結果として被追突車が押し出され,多重事故に至る事例が確認されている。こうした事故を防ぐため,追突直後に自動ブレーキをかけるポストクラッシュセーフティシステムが欧州で実用化されている。先行研究では,本システムの作動により多重事故の発生を抑制する可能性が示唆されているが,日本国内には導入されていない。本研究は追突時にブレーキ中断が発生するメカニズムを解明し,その発生条件を明らかにすることを目的とした。国内での追突事故を想定して軽自動車を用いた実車実験を行い,追突直後における乗員の下肢挙動を分析した。そして実車実験から求めた車両間の反発係数をドライブレコーダに記録された事故に適用し,追突後の被追突車速度と運転者の下肢挙動の関係を調査した。その結果,追突後の被追突車速度と運転者の足首の挙動には相関があり,その際に生じる足首の後退が運転者のブレーキ操作に影響を与えることを確認した。また実験結果より,被追突車のブレーキ中断発生確率が99.9%となる場合の追突速度を求める式をロジスティック回帰分析により導出した。その結果,追突車が普通乗用車で被追突車が軽自動車の場合は追突速度が10.2km/h以上,追突車と被追突車の質量が同一の場合は追突速度が15.3km/h以上でブレーキ中断発生確率が非常に高くなると推定された。そしてこれらの追突速度で追突する事故の発生割合が高いことから,日本国内においては,これらの速度を作動基準とするポストクラッシュセーフティシステムの導入により,ブレーキ中断による多重事故を抑制できると考えられる。(著者抄録)