抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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福島第一原発事故の後,原発から20km圏内の警戒区域では,乳牛,肉牛を含めてすべての牛を安楽死させることが政府から通達された。他方で葛尾村や飯館村のような20km圏外で全損避難を被った畜産農家の牛は,放射線の検査をパスさえすれば,出荷や移動が可能であった。しかし結果的に,両村の20km圏外の農家の約9割(飯館村97%,葛尾村88%〔2018年11月時点〕)が,経営を継続することを選ばなかった。本稿は家畜の移動が可能であった大多数の畜産農家の人びとが,なぜ避難を挟んで廃業を選ぶことになったのかを問い,移動や避難が何を要件とするものだったのかを明らかにした。畜産農家は事故前まで,牛の生存環境である《i.畜舎》《ii.牧草地》《iii.水源》《iv.糞尿の行き場》と,農家が自身の生活を営むうえで必要な環境である《v.家》《vi.農地》《vii.家畜市場》《viii.畜産仲間》《ix.集落の家々》《x.学校・病院・店舗》に隣接して暮らしてきた。しかし突如牛を移動させて経営を続けるか,廃業するかの選択を強いられた人びとは,移動するのであれば事実上,なじみの地域から「孤立」し,上記のような牛の生存環境を新たに「開拓」する必要があったことが明らかとなった。(著者抄録)