抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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原子力事故の影響を受けていない環境での
137Csは,主に過去の大気核試験による降下物である。土壌中の
137Csの深度分布は,表土侵食,堆積,および擾乱(上下方向の混合)の指標である。
212Pb,
214Pb,
212Bi,
214Biのような自然放射性核種は鉱物土壌に含まれるが,表面の有機物が少ないため,表土擾乱の指標にもなる。本研究の目的は,雪崩と風の影響を受けた森林土壌における
137Csと自然核種の深度分布に基づく表土擾乱とその後の移動を評価することである。本研究では,中央日本の南アルプスの仙丈ヶ岳の北東に位置する薮沢流域(海抜1,840~2,716m)の亜高山針葉樹林の土壌を評価に使用した。0から30cmの深さの土壌は,風と雪崩によって撹乱後の経過年数が異なる地点で採取した。Ge検出器を用いたγ線分析法によって,深度毎に分離された土壌中の放射性核種を分析した。
137Csと自然放射性核種の深度分布は,擾乱,侵食,堆積の履歴,および土地被覆の現況を反映して明確な差を示した。非撹乱森林では,土壌断面における
137Csの深度分布は,表面でより高く,深さとともに指数関数的に減少した。裸地と草地地域では,表面
137Cs濃度は著しく低く,土壌侵食により表面土壌が失われることを示唆した。根こそぎが発生した地域では,
137Csは低深度で高く,土壌は著しく撹乱されたことを示唆した。岩石由来の放射性核種は地表で低く,10cm以下の深度で深さとともに上昇し,約30Bqkg
-1で一定であった。地表濃度は森林で顕著に低かったが,以前に撹乱された裸地と草地では深さ方向の変化はほとんどなかった。森林では,表層に堆積した落ち葉などの有機物や岩石由来の放射性核種が希釈されていると考えられる。一方,岩石由来の放射性核種は,土壌擾乱と表面侵食のため,裸地と草地では希釈されなかった可能性がある。これらの結果は,
137Csと岩石由来の天然放射性核種の深度分布が,表面侵食,堆積および有機物堆積の指標として使用できることを示唆している。(翻訳著者抄録)