抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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本研究は,身体的不調を訴える幼児に対して,養護教諭はどのような配慮のもとに言語的やりとりを行うのか,その配慮の特徴を幼稚園教諭との比較から検討することを目的とする。我が国の国立大学附属幼稚園50園に養護・幼稚園教諭用の質問紙2セットを配布し,養護教諭40名,養護担当職員(養護教諭資格なし)1名,幼稚園教諭35名,合計76名からの返送を得(回収率76%),養護担当職員1名を除く75名を分析対象とした。身体的不調を訴える園児と会話をする際に,養護教諭に求められる職務である保健管理面に当てはまる2項目(1適切な処置および対応につなげる,2不調の状態や経緯について園児から正確な情報収集を行う),保健教育面に当てはまる2項目(3健康に関する気づきを促す,4身体的不調に関する表現の発達を促す)のそれぞれについて,どの程度頻繁に配慮するかを5段階で評定してもらい,さらに上記2,3,4に関して,実際に実行・工夫している事柄の自由記述を求めた。分析の結果,両者とも保健管理および保健教育面の全項目について頻繁に配慮したかかわりを行うことが示された。さらに,両者とも保健管理面を保健教育面の項目より頻繁に配慮する傾向がみられた。一方で保健教育面の項目については,養護教諭が幼稚園教諭より頻繁に配慮することが示された。上記の各項目に関して,実際に実行・工夫している点の記述については,両者間で相違はあまり見られなかった。「正確な情報収集を行う」ために実行していることとして10カテゴリが抽出され,「当事者以外の他者からの情報収集(52%)」が最多であり,続いて「幼児に対する質問・幼児から訊くことに関する工夫(43%)」,「不調発生場所でのやりとりの実施(40%)」が比較的多かった。「健康に関する気づきを促すために実行していること」としては6カテゴリが抽出され,「無回答・わからない・質問文の無理解による回答(39%)」が最多であり,続いて「不調の原因および予防法に気づかせる支援(23%)」「不調を普段の生活習慣や身体現象と関連づける支援(23%)」が比較的多かった。なお「無回答・わからない・質問文の無理解による回答」は幼稚園教諭の方が養護教諭より多かった。「身体的不調に関する表現の発達を促すために実行していること」としては8カテゴリが抽出され,「幼児の言語表現の促し・支援」(52%)が最多であり,続いて「幼児に伝達する言語表現の工夫」(32%)が比較的多かった。なお「非言語的表現・客観的指標の使用」は養護教諭の方が幼稚園教諭より多かった。以上から,養護教諭においては保健教育面に配慮したかかわりをする傾向が高いことが推察される。こうした養護教諭の特徴は,健康に関連する事柄およびその表現について,幼児がこの時期にふさわしいやり方で学ぶ機会の増加をもたらす可能性がある。(著者抄録)