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J-GLOBAL ID:202202213750830320   整理番号:22A1074017

イチゴ炭疽病の伝染様式の解明と診断・防除技術の確立

Lifecycle Analysis and Control Technique Development of Strawberry Anthracnose Caused by Colletotrichum fructicola
著者 (1件):
資料名:
号: 53  ページ: 79-128  発行年: 2022年03月31日 
JST資料番号: Z0147A  ISSN: 2189-4515  資料種別: 逐次刊行物 (A)
記事区分: 原著論文  発行国: 日本 (JPN)  言語: 日本語 (JA)
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高品質で良食味の日本産のイチゴは,国内はもとより海外でも非常に人気が高く,国内農業再生や輸出戦略の要となる品目として期待されている.しかし,現在のイチゴ主要品種は炭疽病に対して極めて弱く生産拡大の制限要因になっている.本病の病原は真菌のColletotrichum属菌であり,植物体のあらゆる部位に感染して最終的に枯死させる.本病はイチゴの最重要病害であり,全国での年間被害は890ha,35億円に上るとされる.近年,イチゴのブランド品種が全国各地で開発され,それに伴ってイチゴ原種苗の流通量が増加し,本病がより広がりやすくなっている.さらに,殺菌剤の多用による本病菌の薬剤耐性菌の発生が頻発しているとの指摘もある.そのためこれらの新たな課題への対策がイチゴの生産現場で急務となっている.そこで本研究は,イチゴ炭疽病の発生生態の現状を明らかにし,それらに対応した診断・防除技術を開発することを目的とした.まず本病の新たな伝染源としてイチゴ栽培圃場周辺で生育する雑草を評価した.次に本病診断技術の課題であった検査時間の短縮と感度の向上をPCRの迅速性と高感度性を利用して実現し,原種苗生産圃場での有効性を検証した.一方,産地における本病発生を広域的に予測するための簡便な検出法を考案して病害発生予察への応用を試みた.さらに本病防除における殺菌剤の過用を緩和するために,食品の殺菌処理技術を応用した新たな防除技術の開発を検討した.第1章。イチゴ炭疽病の新たな伝染源としての雑草の評価。本病の伝染源としてイチゴの本病発病株やその残さが知られていたが,それだけでは説明できない発生が生産地で従前より見られ,新たな伝染源の存在が推察されていた.筆者の現場観察で,雑草が周囲に多く生育しているイチゴ株でとくに本病が激しく発生する事例が見られた.そこでイチゴ生産圃場周辺の雑草が本病の伝染源になっているとの仮説を立てて実証を試みた.まず生産圃場で雑草の感染状況を調査した.Colletotrichum属菌選択培地を用いて無病徴の雑草の葉から本属菌を分離し,イチゴ苗への接種とPCR法により病原種の同定を行った.その結果,イチゴ圃場の27.3%(n=33)と被験試料の5.7%(n=541)で,雑草への本病菌の感染が認められた.周辺雑草への感染が認められたイチゴ圃場では,次作のイチゴでの本病の発生が高率に認められた.この結果から,雑草に本病菌が無病徴感染し次作の本病の重要な伝染源になっている可能性が示された.次にイチゴ生産圃場周辺の雑草の優占種であるイヌビユとメヒシバについて,本病菌の感染が維持される期間を接種実験で調べた.その結果,イヌビユでは接種直後から8週間後まで高い感染率(90%<)が維持されたが,メヒシバでは接種直後に80%前後だった感染率が8週間後には20%前後に低下した.両雑草上の本病菌の感染様態を光学顕微鏡で観察したところ,本病菌の分生子発芽率と付着器形成率がそれぞれ90%以上と40~60%であった.これら雑草に本病菌を接種して病徴を調べたところ,イヌビユは接種量が多いと軽度の褐点を生じ,メヒシバは接種量に関わらず無病徴であった.これらより,本病菌はイヌビユやメヒシバに感染し,病徴が軽度あるいは無病徴な状態で少なくとも8週間生存することができることが明らかになった.イチゴ生産圃場周辺の雑草は,多くの場合,除草剤の散布によって駆除される.雑草が除草剤に晒されると潜在的に感染していた植物病原菌が顕在化することは他の植物病害で知られている.そこで,雑草への除草剤処理が本病菌の分生子形成に及ぼす影響を,イヌビユ,メヒシバおよびノゲシを用いた接種実験で調べた.その結果,除草剤処理したこれらの雑草の枯死葉上では大量の本病菌分生子が形成されることがわかった.この結果から,イチゴ生産圃場周辺の雑草が除草剤処理されると,枯死した雑草上で本病菌分生子が大量に形成され,本病の有力な伝染源になる可能性が示された.第2章。イチゴ無病徴感染株からのイチゴ炭疽病の新たな検出技術の開発と健全苗育成および本病発生予察への応用。イチゴ植物体からの本病菌の検出には従来から選択培地法や生物検定法などが用いられてきたが,検出感度が低く判定までに時間を要するために無病徴感染株を多数検査することは困難であった.そこで,無病徴感染株からも本病菌を検出できるPCR技術の確立を試みた.イチゴ組織はPCR阻害物質である多糖類やポリフェノールを多く含む.そこでDNA抽出法を改良し,磁気ビーズ法で菌体とイチゴ小葉の混合試料から本病菌を効率的に検出できるようにした.次に分生子液を噴霧接種した無病徴感染株の小葉および葉柄基部についてPCR法と選択培地法を比較したところ,PCR法は選択培地法よりも検出率が低く,PCR法の検出感度をさらに高める必要があることがわかった.そこで検出感度向上を目的として,DNAを抽出する前に試料を培養するBio-PCR法を行うこととし,その培養条件を検討した.その結果,ショ糖加用ジャガイモ煎汁液体培地を用いて28°C,2日間振とう培養すると本病菌の菌数が大幅に増加し,これにより選択培地法よりも検出感度が高くなり,検出所要時間も3週間から4日間にまで大幅に短縮できることがわかった.またこの実験の過程でイチゴの部位別の検出率を調べたところ葉柄基部の検出率が最も高く,被験試料として葉柄基部が適していることがわかった....(著者抄録)
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分類 (3件):
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菌類による植物病害  ,  植物の病虫害防除一般  ,  野菜 
引用文献 (130件):
  • Al-Haq MI, Sugiyama J, Isobe S(2005)Applications of electrolyzed water in agriculture and food industries. Food Sci Technol Res 11:135-150
  • Bartlett DW, Clough JM, Godwin JR, Hall AA, Hamer M, Parr-Dobrzanski B(2002)The strobilurin fungicides. Pest Manage Sci 58:649-662
  • Carlos G, María C, Francisco JFA, Giles B, Inmaculada V, Alison C, Jesús MC ( 2008 ) Isolation and pathogenicity of Colletotrichum spp. causing anthracnose of strawberry in south west Spain. Eur J Plant Pathol 120:409-415
  • Cerkauskas RF, Dhingra OD, Sinclair JB(1983)Effect of three desiccant-type herbicides on fruiting structures of Colletotrichum truncatum and Phomopsis spp. on soybean stems. Plant Dis 67:620-622
  • Cook RT ( 1993 ) Strawberry black spotcaused by Colletotrichum acutatum. Pages 301-304 in: British Crop Protection Council Monograph No. 54: Plant Health and European Single Market. Ebbels D, ed. Hampshire, UK
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