抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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我が国は世界有数の漁業大国であるが,同時に年間300万トン前後の水産物を輸入する水産物輸入大国でもある。2019(令和元)年度の水産物の輸入量は,金額ベースで1兆7,404億円,重量ベースで247万トンとなっている。エビは輸入依存度が高く,金額ベースで全品目中三位,年間1,700億円程度のエビを海外より輸入している。エビ類は一般に冷凍品として輸入されるが,冷凍エビを解凍する際,急速に黒色のメラニンを生成し,その商品価値が著しく損なわれる。現在,黒変防止のために亜硫酸塩などの添加物が用いられているが,亜硫酸塩は人体にとってアレルゲンとなる上,副反応にて有害なホルムアルデヒドを生じることから,新たな黒変防止法の開発が求められている。本研究では,果実などの酵素的褐変防止に食塩が一般的に用いられることを踏まえ,食塩類が甲殻類黒変防止に効果を示すかについて最初に検討した。生鮮クルマエビを用いた検討の結果,塩化ナトリウム水溶液による処理では,濃度に関わらず黒変防止に対して大きな効果が認められなかった。この凍結融解実験において,エビから染み出した体液を多量に含む融解液が著しく黒化していたため,体液中のフェノールオキシダーゼ活性の原因タンパク質について詳細な探索を行った。原因タンパク質の候補として,これまでフェノールオキシダーゼとその類縁タンパク質ヘモシアニンが挙げられている。フェノールオキシダーゼとヘモシアニンは,共に活性中心として二核銅中心を持つ「タイプ3銅タンパク質」に属する。フェノールオキシダーゼは,メラニン形成に寄与するが存在量が極めて少なく,ヘモシアニンは本来酵素活性を持たず酸素運搬タンパク質として機能するタンパク質で体液中の存在量が極めて多く,条件によって微弱なフェノールオキシダーゼ活性を持ち得ると考えられてきた。本研究では,申請者が最近見出した「体液性フェノールオキシダーゼ」とヘモシアニンの酵素活性について検討した。その結果,本実験条件ではヘモシアニンの酵素活性は認められず,クルマエビ黒変現象の原因酵素は体液性フェノールオキシダーゼであることが示唆された。両者は極めて構造的特徴が類似していることから,これまで互いに分離することが困難で活性の本体が誤認されてきたと考えられる。(著者抄録)