抄録/ポイント:
抄録/ポイント
文献の概要を数百字程度の日本語でまとめたものです。
部分表示の続きは、JDreamⅢ(有料)でご覧頂けます。
J-GLOBALでは書誌(タイトル、著者名等)登載から半年以上経過後に表示されますが、医療系文献の場合はMyJ-GLOBALでのログインが必要です。
背景。水素の需要は今後,脱炭素化に向けて増大すると見込まれるが,再エネ電力から製造するグリーン水素だけでは,近い将来の水素の大量需要を満たすことは難しい。このため各国の水素戦略では,CO2の分離回収貯留(CCS)を伴って化石原料から製造するブルー水素の利用も想定しており,その経済性評価が望まれている。また,CCSを行っても一部のCO2が排出されるため,経済性評価においては,炭素の排出に対して課せられるCO2価格を考慮する必要がある。目的。国際エネルギー機関(IEA)などの報告を基に,製造地や原料の違いによるブルー水素の経済性の現状および2030年の見通しを整理する。また,日本への輸出が期待される豪州のブルー水素について,CO2価格の影響を含めた経済性を独自に評価する。主な成果。水素製造にかかる経済性指標の均等化水素原価(LCOH)について,製造地におけるLCOH(以下,製造地LCOH)をIEAの報告などを基に整理し,製造地や原料(天然ガスや石炭)による違いを比較した。1.欧州の天然ガスを原料とするブルー水素とグレー水素の比較。現在,天然ガスを原料としCCSを伴わないグレー水素が世界的に流通している。IEAの試算によると,CCSを行うことで製造地LCOHは現状(2019年時点)で約5円/Nm3上昇する。2030年において,ブルー水素の製造地LCOHは,CCSの技術進展により設備費と運転維持費が低下するが,天然ガス単価が現状の0.76円/MJから0.83円/MJに増加するため,現状の23円/Nm3から低下しない見通しである。2.原料の違いによる欧州と中国のブルー水素の製造地LCOHの比較。IEAによる2030年予測から,欧州の石炭を原料とするブルー水素の製造には上述の天然ガスを原料とする場合に比べて2倍以上の設備費と運転維持費を要するが,原料費が安価なため,製造地LCOHとしては同程度の約23円/Nm3となる(図1)。一方,中国では現在,石炭を原料とする安価なグレー水素が主に流通している。石炭単価を3,300円/t(発熱量を6000kcal/kgで換算)としたIEA試算によると,ブルー水素の製造地LCOHは約15円/Nm3となり,CCSを行っても世界的に最も安価である。これは欧州などに比べて中国では設備費が低いためである。3.豪州のブルー水素とグリーン水素の製造地LCOH試算とCO2価格の影響。国際機関などの前提条件を基に,CO2価格を考慮した2030年の豪州におけるブルー水素とグリーン水素の製造地LCOHを試算した。石炭が原料のブルー水素はCO2価格が上乗せされることにより最も安いケースを仮定したグリーン水素よりも若干高くなる可能性がある。また,いずれの製造地LCOHも褐炭由来のブルー水素についての政府目標価格12円/Nm3より高く,設備費の低減などによる一層の低コスト化が求められる。さらに,大量排出されるCO2の貯留について商用化促進も必要である。(著者抄録)