抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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膜蒸留(MD)は疎水性多孔質膜を介した両側に生じる蒸気圧差を駆動力とする膜分離プロセスであり,工場廃熱などが利用できれば極めて低コストで脱塩が可能である。一般にMDではポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜などが利用されているが,フッ素は毒性が懸念されており代替膜の開発が望まれている。他方,天然繊維の絹や合成繊維のキュプラ等の布繊維を高温で炭化処理すると,布繊維が元来有する高い多孔性を維持したまま,非常に疎水性の高い炭化繊維材料が得られる。本研究課題では,繊維材料および製布工程が異なる炭素化繊維膜を用いて疎水性,多孔性および膜蒸留測定を行い,炭素化繊維膜の素材および製布工程が膜物性に与える影響について調査した。比較として非溶媒相分離法を用いて作製した多孔質PVDF膜も用いた。炭素化繊維膜は中津山熱処理株式会社と新潟県工業試験場が作製したものを使用した。膜表面の疎水性の程度は,水接触角の経時変化と表面自由エネルギーから評価した。また,画像解析から表面多孔度を評価した。MD測定では約60°Cに加温した3wt%NaCl水溶液を供給液とし,ポンプを用いて膜上に循環させた。炭素化繊維膜はPVDF膜と比較し,高い接触角および低い表面自由エネルギーを示した。また,炭素化繊維膜はPVDF膜と比較し,極めて高い表面多孔度を示した。これらのことから炭素化繊維膜は優れた疎水性多孔性材料であることが確認された。MD測定では透過液量と時間の間に線形関係が確認された。この線形関係の傾きから透過流束を算出した。繊維材料に絹,製布工程に編物を用いた炭素化繊維膜の透過流束は,PVDF膜と比較し約5倍の値を示した。これは炭素化繊維膜の高い疎水性および多孔性に起因するものではないかと考えられる。また,全ての膜の脱塩率は99.9%を示した。このことから,現状で膜蒸留に最も適した膜は繊維素材に絹,製布工程に編物を用いた膜であることが確認された。(著者抄録)