抄録/ポイント:
抄録/ポイント
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日本化学会認定の日本化学遺産(CHJ)001号は,舎密開宗を含む宇田川榕菴(1798-1846)の化学関連資料である杏雨書屋の所蔵である。舎密開宗(化学の基礎)は,日本で初めてラヴォワジエの化学を受け入れたと言われている。榕菴は,24冊の蘭語文献を研究し,化学と電気の実験を行ってこの本を書いた。舎密器械図彙(化学機器イラスト)はCHJ001号の記事である。ラヴォワジエの化学原論からの10枚の図版が含まれている。原論の図版の数は,蘭語版のGrondbeginselen der Scheikundeでは13から10に減少した。榕菴はこれらの10枚の図版を中国のインクで正確に筆写した。原論以外の舎密器械図彙の図版の1つは図5である。本論文では,次の4つのポイントを説明する。まず,図5を調べることにより,著者は,それが,さまざまな種類の空気に関するジョセフ・プリーストリーの実験と観察の蘭語訳であるProeven en waarneemingen op verschillende soortenvanluchtの図版の筆写であることを示している。榕菴は蘭語版から筆写したものと思われるが,CHJ001号では見つからなかった。著者は今後もこの問題について研究を続けていくつもりである。第二に,著者は,図5の左側にある大型機器は,日本化学会の機関誌である化学と工業(2010年7月)等の解説記事でなされた「キップの装置」であるという芝哲夫の主張を訂正する。代わりに,著者は,この装置が西洋化学の社会史で行われた研究を描いた,「炭酸水製造器」であることを示す。日本化学会はこの主張を受け入れ,芝のコメントを訂正した。第三に,舎密開宗には,化学機器の科学的画像だけでなく,電気機器の科学的画像も含まれている。例えば,図9(舎密開宗の番号付けによると漢字で書かれた第7図)は「ボルタ柱」である。坂口正夫は,図9の出典はH.S.HijmansのOntwerpvaneene Algemeene Scheikundeであるが,理由は説明されていない。著者は,舎密開宗を書くための榕菴の草稿である開物全書図を調べることによって,彼の提案を証明した。最後に,同じ開物全書図を調べてみると,榕菴は化学だけでなく,電気を医学に応用する分野である電気治療にも興味があり,ジョセフ・プリーストリーの研究の影響を受けていたことがわかる。開物淵源稿には,3枚の電気治療の図が含まれている。図12は「電気風呂」を示し,図13は帯電した患者から出た火花を示している。図14は,「電気火花」治療を示している。これらの数字の出典は,ウィレム・ヴァン・バーネフェルドの医療用電気である。彼の本は,プリーストリーのオリジナルの実験による電気学の歴史と現状に大きく影響されている。その結果,榕菴もプリーストリーの間接的な影響を受けた。要約すると,この記事は,宇田川榕菴のこれまでほとんど知られていない側面,すなわち科学的な画像を注意深く調べることにより,ラヴォワジエに加えてプリーストリーへの彼の恩義を明らかにする。(翻訳著者抄録)